2021年7月18日日曜日

"My Life: Queen of the Court" by Serena Williams (2009) 「回顧録: テニスの女王」(セレーナ=ウイリアムズ著)

ケアンズ滞在中に、市立図書館で、極めて感銘深い伝記もの (回顧録) を見つけたので、目下読書中である。 著者は米国の黒人プロテニス選手、セレーナ=ウイリアムズ。ごく最近まで、女子テニス界の「女王」 と言われてきた人物が、自分の過去 (半生) を振り返って、後進のために綴った回顧録である。 もし、大坂なおみがこの回顧録を読んでいたら、きっと 「2018年」 の全米テニスで (セレーナを決勝で破って) 優勝以来、なおみを精神的にずっと苦しめている葛藤 (2021年の全仏テニスで試合後の記者会見を拒否、試合棄権! etc) から、速やかに解放されるだろう、と私は確信する。 実は、セレーナ自身も (直接の原因は別としても) 同じような精神的葛藤に悩まされたが、結局、ある転機を掴んで、見事にカムバックしたからである。それは、端的に言えば、恐らく「追う」立場から (初めて頂点に達して) 「追われる」立場になった時点に起こる様々な精神的な圧迫である、と私は思う。 残念ながら、未だ邦訳が出版されていないようなので、その「さわり」をここで紹介したい。
セレーナは、1981年にカルフォルニアに住む黒人夫婦の5人目の娘として誕生し、1、2 歳年上の長身ヴィーナスについで、女子テニス界の女王となった。 5歳頃からテニスを始めた2人の娘の名コーチは父親 (リチャード) 自身だった。先ず、姉のヴィーナスが1998年の全豪テニスで、妹セレーナを決勝で破って、女子テニス世界で最初の「黒人」出身の女王に輝いた! 翌年の全仏、全米で遂に、妹のセレーナが姉に代わって、テニス界の女王になった。2002年には、全仏、全英 (ウインブルドン) 全米で、セレーナが三連勝し、最初の「セレーナ黄金時代」を築いた。 2003年には全豪でも初優勝 (遂に4大大会を制覇!) 後、ウインブルドンで、姉ヴィーナスを再び破って優勝し、正に「破竹の勢い」だった。ところが、その直後に一連の危機が、突然訪れた! ハイヒールでダンス中、転倒して、膝を脱臼し手術を受け、療養 (リハビリ) 生活が始まった。そして、最愛の長姉 (31歳) が事故死で、あっと言う間に、あの世に逝ってしまった! さて、 2004年に入って、セレーナは、ウインブルドンで決勝まで進んだが、マリア=シャラポーバ (ロシア) にストレートで敗け、全米テニスでは、準準決勝でジェニファー=カプリアッチ (米) にもあっさり敗れ、再起のチャンスが閉ざされたかに見えた。 2005年の全豪で、久し振りに優勝を飾ったが、 以来「丸2年間」 (2007年の全豪まで)、優勝から遠ざかる運命になった。。。
このブランク期間を埋めたのが、母親や2人の姉たちとのアフリカ西岸への「慈善友好」旅行だった。 特に、黒人奴隷売買の中心地となったセネガルとガーナへの旅だった。 自分たちの祖先が、その昔、奴隷商人たちによって、捕獲、売買されたアフリカの故郷を訪ね、旧植民地に住む貧しい人々や子供たちに、助けの手を差し伸べる事業に、セレーナは初めて積極的に参加した。「セレーナ=ウイリアムズ中学校」の創設や、マラリア特効薬の寄付、子供たちへのテニスの指導など、一連の慈善活動を通じて、セレーナは初めて、人生に (テニス以外の) 「新たな目的 (生き甲斐)」を発見した! 南ア初の黒人大統領 (ネルソン=マンデラ) からも、力強い激励を受けた! それが、2007-2008年に始まる彼女の 「テニス界カムバック」 への熱い原動力 となった。 2008年の北京五輪で、姉ヴィーナスと組んで、ダブルスで優勝した後、全米テニスでヴィーナスを準々決勝で破ったセレーナは、決勝でエレーナ=ジャンコビッチをもストレートで破って、ついに 「世界ランキング一位」 に舞戻った! こうして、新しい女王「セレーナ」が再来! 以来、2017年の全豪で7度目の優勝を飾るまで10年間近く、セレーナの「第二の黄金時代」 が続く。。。結果的には、2017年の妊娠で、「セレーナ時代」 は、遂に幕を閉じることになった。
最後に、2018年の全米テニス決勝で、(なおみに) 敗けたセレーナが、主審に激しい言葉 (「嘘つき」, 「泥棒」など) で食ってかかって、「なおみの表彰式を台無し」にしてしまったことに対して、セレーナは後に、なおみに手紙で深く詫びている: https://www.thetennisdaily.jp/news/off-court/2019/0039176.php
片や、大坂なおみは, 自身のメンタルヘルスを守るために 「全仏テニス」 を棄権以降、競技から離れているが、8月30日に開幕する 「全米」 の前哨戦 となる 「モントリオールテニス」 に出場する予定。 大坂は7月24日にスタートする 「東京五輪」 (女子の決勝: 7月31日) で、「全仏」 以来の大会に参戦後、カナダで開催の大会でWTAツアーへ復帰する形となる。

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