Aurora-A/Aurora-1 は受精卵の核分裂に重要なキナーゼであるが、PAK1が Aurora-1 のThr288 とSer342 を燐酸化することが、2005年にシンガポール大学のEd Manser の研究チームによって、発見された (1)。
さて、2007年になって、我々は, 線虫を"PAK1遮断剤" (例えば、プロポリス等) で処理したり、
"PAK1" 遺伝子を欠損させると、(i) 産卵数が極端に低下すること、及び (ii) 耐熱性になることを発見した(2)。 更に、2013年に、「PAK1欠損株」が野生株より、6割も長生きすることを証明した (2)。
(上記) 両者の発見を組み合わせると、(細胞質中の) PAK1 が、受精後に、核膜が消失した直後、(核内にあった) 紡錘体上の "Aurora-1" を燐酸化することが、その後の核分裂/卵割の開始に重要であることが、強く示唆された!(詳しくは、右図を参照されたし)。
REF:
1. ZS Zhao, JP Lim, YW Ng, L Lim, Ed Manser (2005)。
The GIT-associated kinase PAK targets to the centrosome and regulates Aurora-A。Mol Cell. 20。237-49.
2. Yanase S, Luo Y, Maruta H. (2013)。
PAK1-deficiency/down-regulation reduces brood size, activates HSP16.2 gene and extends lifespan in Caenorhabditis elegans. Drug Discov Ther. 7: 29-35.
因みに、我が輩は1977年に "土壌アメーバ" から最初のPAK1 (ミオシンキナーゼ) を発見、17年後 (1994年) に、Ed Manser が最初の "哺乳類" PAK1 を発見した。以後、この 2 チームが世界の「PAK1 研究」を主導して来た。。。特に我がチームは、「健康長寿」に役立つ 様々な「PAK1 遮断剤の発掘/開発」研究に集中して来た。
1995年に「Aurora 」 と呼ぶ「発癌キナーゼ」を発見した科学者 (Scotland の David Glover) は、北極圏の「オーロラ」と言う不思議な現象 (実物 or 写真) を観たことがあるに違いない。
我々は(タスマニア島を含めて) 南極圏でもオーロラ現象があることに注目して、PAK1-Aurora 1 シグナル伝達系が、発癌ばかりではなく、老化にも一肌関与していることを初めて突き止めた!
Aurora-A と NF2 (Merlin) との関係:
Aurora-A は、抗癌蛋白「Merlin」を燐酸化して、その抗癌作用を抑制する作用もあることが判明した!
更につけ加えれば、前述した HDAC阻害剤「AR-42」はPAK1遮断剤であるばかりではなく、PAK1 の基質 (相棒) である "Aurora-A" 遺伝子の発現をも抑える事が判明した:
SS Burns, EM Akhmametyeva, JL Oblinger, et al (2013).
Histone deacetylase inhibitor AR-42 differentially affects cell-cycle transit in meningeal and meningioma cells, potently inhibiting NF2-deficient meningioma growth. Cancer Res. 73: 792-803.
人生は、「善玉」(長寿蛋白メルリン = PAK1 阻害蛋白) 対「悪玉」 (老化酵素 PAK1/Aurora-1) の戦い!
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