2019年1月1日火曜日

ALS(筋萎縮性側索硬化症) の一部 (SOD1 遺伝子変異の場合) は PAK遮断剤で治療しうるはず

新年早々、米国のALS 患者からメールで、「ALS に有効な天然物はないか」という問い合わせが届いた。私の記憶が正しければ、認知症 (AD) 同様、ALS はPAK依存性の難病である。従って、「プロポリスなどの天然PAK遮断剤が有効である」と返事した。

さて、米国の有名な球団「NYヤンキース」の往年のホームラン王、ルー・ゲーリッグ(1903ー1941)も晩年(1938年頃)に、この重病にかかった故に球界を引退、間もなく病死したため、この病気(ALS)は、別名「ルー・ゲーリッグ」病とも呼ばれている。重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、運動ニューロン病の一種。極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡する。現在のところ、有効な治療法は確立されていない。病因はいまだに余り良くわかっていないが、ADやHDと同様、ある種のタンパク質の異常凝集が一因ともいわれている。

34年前に、中国のハルピン大学病院のグループにより、高血圧の特効薬「グアナベンズ 」がALSにかかったセンチュウの寿命を伸ばす作用があることが発見された (1)。更に、哺乳類動物 モデル  (SOD1 遺伝子変異) 実験で、この薬剤がALS(筋萎縮性側索硬化症) にも有効であることが実証された。 さて、そのメカニズムを詳しく調べてみると、この薬剤はGタンパク質「RAC」を抑制することによって、PAKを遮断することがわかった。PAKが血管の平滑筋を収縮して、血圧を高めることは昔から知られている。更に、PAKがセンチュウの寿命を縮めていることも、我々の手で最近証明されている。従って、この薬剤がPAKを遮断することによって、血圧を低下したり、センチュウの寿命を伸ばす作用があることが確立したわけである。従って、ALS  (少なくとも"SOD1 遺伝子変異"の場合) もADやHDと同様、PAK依存性の難病の一つである可能性が非常に強い。

この高血圧薬は1966年にドイツの ベーリンガーによって開発された。現在は、ジェネリックな薬 「ウインス)」が「アルフレッサ・ファーマ」から発売されているので、極めて安価である。一日の経口量は、2 mg を2回とされている (毎日4 mgの薬価は、わずか34円!)

前述したが、抗生物質「ミノサイクリン」(MC) もPAK遮断剤の一つであり、現在はジェネリック薬として、安価に市販されている。 少なくともSOD1遺伝子変異が病因であるALS患者の場合、MC が治験で治療効果を示したといわれている (2)。
 


参考文献: 

1. Jiang HQ1, Ren M2, Jiang HZ1, Wang J1, Zhang J3, Yin X1, Wang SY1, Qi Y1, Wang XD1, Feng HL4. Guanabenz delays the onset of disease symptoms, extends lifespan, improves motor performance and attenuates motor neuron loss in the SOD1 G93A mouse model of amyotrophic lateral sclerosis (ALS). Neuroscience. 2014 ;277:132-8. 

2. Benatar M. Lost in translation: treatment trials in the SOD1 mouse and in human ALS. Neurobiol Dis. 2007 ;26 (1):1-13.



 

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