三島海雲が1919年に起こした「カルピス」革命: 創業百年後 に 「PAK遮断作用」 を実証!
「カルピス」 と 「PAK」 の接点は一体何か?
実は、 2、3年前に、「カルピス」 に関する大変興味深い論文を見つけた。牛乳中の蛋白の80%を占める「ガゼイン」 (CS) が乳酸菌によって分解され、19個のアミノ酸からなるペプチド (CS19, NIPPLTQTPVVVPPFLQPE) が蓄積するが、そのペプチドには、記憶や学習能力を上げる功果があることが、臨床テストで証明されたという内容である。カルピス (朝日ビール傘下) と京大農学部との産学共同研究結果だ。
その論文を読んで「ハタ」と閃いたことがある。 このペプチドには「プロリン」というアミノ酸が豊富であったからだ。実は、もう20年以上も昔、 病原キナーゼ「PAK 」に結合する蛋白「PIX 」が発見された。この蛋白が、PAK分子上の18個のアミノ酸からなる (プロリン豊富な) 「PAK18」と呼ばれる部分と結合すると、PAKを活性化し、細胞の癌化を引き起こす。 さて、PAK18自身は、細胞膜を通過し得ないが、これに細胞透過ペプチド 「WR」 を結合させると、癌細胞に入り、PAK とPIXとの結合を選択的に阻害することによって、癌化 (癌の増殖) を阻害することを我々は突き止めた。 この現象は、癌細胞に特異的で、正常な細胞の増殖には、全く影響を与えなかった。こうして、PAK とPIX の結合が癌化に必須であることが初めて実証されたわけだ。
さて、PAK は癌化ばかりではなく、種々の神経疾患、例えば認知症などに伴う記憶や学習能力の喪失にも関与している。 カルピスのペプチド (CS19) とPAK18とは、両方ともプロリン豊富であり、然も長さ (ペプチド鎖) もほぼ同じ位である。ひょっとして、カルピス中の「CS19 」は、PAK18同様、PAK と PIX の結合を阻害するPAK遮断剤ではなかろうか? 病弱がちだった三島海雲 (1878-1974) は、酸乳という「モンゴル遊牧民族の知恵」を借りて、 自ら開発した "カルピス" を飲み始めてから、健康になり、95歳以上の健康長寿を全うしたそうである。。。 更に動物実験でも、CS19 に寿命延長効果や血圧降下作用などがあることが実証されており、これらの薬効は、プロポリスなどのPAK遮断剤 と極めて良く類似している。
決定打 (ホームラン) は、「カルピス」の美白作用、つまりメラニン色素の合成を抑制する作用の発見である。 前述したが、2017年に、我々は沖縄の琉球大学のチームと共同で、「PAK がメラニン色素合成に必須である」 ことを発見した。 逆に言えば、「 美白作用を指標に、PAK遮断剤を手軽にスクリーニングし得る!」。 こうして、2020年に、星薬科大学と カルピス (「朝日」ビール傘下) との共同研究により、「カルピス」に美白作用があることが突き止められた! 美白作用は、主に2種類のメカニズムによる。 その一つは、メラニン色素を合成する酵素 (Tyrosinase) を直接阻害すること。資生堂などの大手化粧品会社の製造/販売している美白剤は、主に前者に属する。 もう一つは、この酵素の遺伝子発現を抑制すること。 PAK遮断剤は後者に属する。 「カルピス」はこの酵素を直接阻害せずに、遺伝子発現を抑えることから、明らかに 「PAK遮断剤」に属する!
実は、カルピスやスイスチーズなどの製造に使用される乳酸菌 (Lactobacillus helveticus) 発酵 による酸乳に、美白 (=PAK遮断) 作用があることは、中国の研究グループによって、 既に2017年に報告されていた! https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28598022/
J Rong, C Shan, S Liu, et al (2017). Skin resistance to UVB-induced oxidative stress and hyperpigmentation by the topical use of Lactobacillus helveticus NS8-fermented milk supernatant. J Appl Microbiol.;123:511-523.
なお、NF 患者、癌患者、COVID 肺炎患者などには、「カルピス」 を毎日、少なくとも 250 ml (約100 円!) 飲むことをお勧めしたい。。。
なお、ヤクルトの酸乳「シロタ株」には、流感や癌 など (共に、PAK依存) を抑える作用があり、PAK遮断飲料の可能性もあるが、未だ 「決定打」 (美白作用の実証) に欠けている。。。
注意: 朝日ビールは、最近、牛乳の代わりに、"豆乳"を原料にして発酵させた (主に女性向け) 飲料 "Green Calpis" を売り出したが、"豆乳は (牛乳と違って) カゼインを全く含まない" ので、CS19 を生産せず、美白 (PAK遮断) 作用は保証できない!
詳しくは、星薬科大学とアサヒビール (Calpis) の "歴史的な" 研究論文の要旨を参照されたし。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32674403/
Nobutomo Ikarashi , Natsuko Fukuda , Makiba Ochiai, et al
Lactobacillus helveticus-Fermented Milk Whey Suppresses Melanin Production by Inhibiting Tyrosinase through Decreasing MITF Expression.
Nutrients. 2020 Jul 14;12: 2082.
Abstract
Whey obtained from milk fermented by the Lactobacillus helveticus CM4 strain (LHMW) has been shown to improve skin barrier function and increase skin-moisturizing factors. In this study, we investigated the effects of LHMW on melanin production to explore the additional impacts of LHMW on the skin. We treated mouse B16 melanoma cells with α-melanocyte-stimulating hormone (α-MSH) alone or simultaneously with LHMW and measured the amount of melanin. The amount of melanin in B16 cells treated with α-MSH significantly increased by 2-fold compared with that in control cells, and tyrosinase activity was also elevated. Moreover, treatment with LHMW significantly suppressed the increase in melanin content and elevation of tyrosinase activity due to α-MSH. LHMW also suppressed the α-MSH-induced increased expression of tyrosinase, tyrosinase-related protein 1 (TRP1), and dopachrome tautomerase (DCT) at the protein and mRNA levels. Furthermore, the mRNA and protein microphthalmia-associated transcription factor (MITF) expression levels were significantly increased with treatment with α-MSH alone, which were also suppressed by LHMW addition. LHMW suppression of melanin production is suggested to involve inhibition of the expression of the tyrosinase gene family by lowering the MITF expression level. LHMW may have promise as a material for cosmetics with expected clinical application in humans.
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