2018年10月4日木曜日

2018年ノーベル化学賞: 蛋白質の機能を改良/進化させる遺伝子工学を開発したフランシス=アーノルド女史 (Caltech) ら3名へ

有名な「ダーウインの進化論」によれば、我々人類 (ホモ=サピエンス) を含めて凡ゆる生物は、長い歴史を経て、絶え間なく突然変異を繰り返し、与えられた環境下で「生存により有利な変異」を獲得した者だけが自然淘汰を経て、生き残ってきた。 恐竜やマンモス、ネアンデルタール人 (類) やタスマニア=タイガーは、不幸にして、(氷河期など) 過酷な環境下に耐えられず、絶滅した。

さて、凡ゆる生物の機能を担っているのは、遺伝子によって生産される種々の (酵素を含めた) 蛋白質である。従って、ある特定の遺伝子に、人工的に変異を与えれば、その産物である蛋白質の機能を (自由自在に) 改良/進化させることができるはずである。そういう考えに基づいて、米国のカルフォニア工科大学 (CalTech) の教授フランシス=アーノルド女史 は、25年ほど昔、酵素の「指向性改良/進化法」(遺伝子工学) を初めて開発し始めた。

https://www.chem-station.com/chemglossary/2017/11/directed-evolution.html

https://www.asahi.com/articles/ASLB3678QLB3ULBJ01P.html?iref=comtop_list_api_n01


この方法を使用すれば、例えば、アルコール発酵 (いわゆる「酒作り」) に必須な一連の酵素を人工的に「熱耐性」に進化することによって、発酵作業を高温で効率良く進めることができるようになる。確かに、「Bio Tech」産業に寄与するところ多しである (かの有名な「PCR法」では、温泉由来の耐熱DNA polymerase が大活躍した!)。  しかしながら、地球温暖化に耐える人類 (一種の「フランケンシュタイン」) をこの方法 (指向性改良工学) で創造することは、技術的にも法的にも、不可能である。人類体内にある数万種類の酵素や蛋白を全部、「熱耐性の変異体に変換」することは不可能だからだ。

だが、遺伝子工学を利用せずに、人畜を熱耐性 (「夏バテ」しないよう) にすることは、決して難しいことではない。さて、せんちゅうの適温は16度前後であるが、35度で処理すると、平均寿命が14日からたった1日 (24時間) に縮まる。ところが、PAK遮断剤であるプロポリスや15K でせんちゅうを前処理すると、35度でも7日以上生き延びることができる。何故かというと、高温では、熱ショック蛋白が誘導され、せんちゅう体内の種々の蛋白が熱変性から保護されるからである。ところが、PAK遮断剤のない状態では、熱ショック蛋白の誘導が抑えられ、生存に必須な種々の蛋白が変性を受け、速やかに死亡に至る。


PAK遮断剤は、"夏バテ"予防ばかりではなく、癌や老化現象の予防、種々の感染予防や免疫機能の活性化など、「人畜の生き残り」に欠かせない役割を果たしている。 従って、「我田引水」ながら (少なくとも医療分野に関する限り) 、(20年ほど昔、医療のための"遺伝子工学"から足を洗った) 私自身は、むしろ「PAK遮断法」に軍配を上げたい。

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