2022年3月1日火曜日

ダウン症の要因: DSCAM 分子によるPAK の異常な活性化
従って、PAK遮断剤により、知能の回復はある程度可能

ダウン症 (DS, Down syndrome) とは、染色体21 (ヒトでは、最小の染色体) が (通常は一対=2本に反して ) 3本になったため (約800 人に一人の割合で) 発生する 遺伝子病の一つであり、 認知症に似た「学習能力の低下」現象をもたらす。 更に、平均寿命が未だに60歳を越えない! さて、 この染色体上には、 2000年のヒトゲノム研究 (塩基配列決定) 結果によれば、多数 (正確には、約200-250 個、ヒト遺伝子全体の1。5%に当たる) の遺伝子が存在するが、その内で、学習能 力の低下に関与する遺伝子産物は、主に、「DSCAM」と呼ばれる神経細胞膜貫通の 「ネットリン (NT) 受容体」と、その細胞内の足に結合する"PAK" と呼ばれる病 原キナーゼらしいことが、実は、2004年頃、既に、中国の研究者によって、明ら かにされていた。
しかしながら、DSCAM-PAK シグナルが、如何に学習能力に影響するかが、長らく 不明のままだった。 さて、2021年になって、ようやく、中国 (南京医科大学など) の臨床研究グループ によって、PAKを遮断すると、ダウン症患者の学習能力が改善されることが明らか にされた (1)。 ダウン症の症状は、実は複雑で、学習能力の低下ばかりではなく、高血圧、そ の他 (自閉症と違って、例えば、「社交的」、「快活」という明るい面も含めて ) 多数の 「フェノタイプ」 (性格) があるが、少なくとも、血圧、学習能力 (及び寿命 ) に関しては、PAK遮断剤の経口によって、ある程度、改善が可能である、ことを 明記したい。。。しかしながら、逆に「DSCAM 遺伝子」を欠如したマウスでは、 「自閉症状」 (社交性欠如) を呈する (2) ので、この遺伝子は人類社会では、最小限「一対は必要」 なようである。。。もっとも、PAK遺伝子は、社交には必ずしも必要ないようであ る。
さて、従来、ダウン症の治療に、血圧降下剤の一種である「タウリン」という天然 アミノ酸が使用されていた (毎日 6 グラム 経口) 。アミノ酸 と言っても、アミ ノ基はあるが、「カルボン酸」が、硫酸基に置換されている。メチオニンやシス チン等のSH基のあるアミノ酸の代謝 (酸化) 物として、人類や犬の体内に存在するので、 いわゆる「必須アミノ酸」ではない (ただし、猫や魚では、合成酵素に乏しいので、必須アミノ酸!)。PAK遮断剤は、血圧を降下させる作用がある から、「タウリン」もPAK遮断剤である可能性がある。そこで、先ずタウリンの抗 癌作用を確かめてみた。 PAK依存性の「A549 」 と呼ばれる肺癌細胞株の増殖を、 タウリン (IC50=20 mM) が抑えることが既に報告されていた。 更に、 PAK依存性のメラニン合成に対するタウリンの作用について、文献調査をしたところ、2010年 に韓国の研究グループが、タウリンの美白 (メラニン合成阻害) 作用を、実 証していた (3)! 従って、「タウリンが天然PAK遮断剤である」ことは、確実。ただし、鎮痛剤アスピリンや (乳酸飲料) "カルピス" 中の酪酸と同様「細胞透過性がかなり悪い」ので、プロポ リスやフコイダン、ビタミン D3 やビタミン K2 (納豆) などに、置き換えた方が、 賢明
参考文献:
1. Tang XY, Xu L, Wang J, et al (2021). DSCAM/PAK1 pathway suppression reverses neurogenesis deficits in iPSC-derived cerebral organoids from patients with Down syndrome. J Clin Invest. ; 131: e135763.
2. Peng Chen, Ziyang Liu, Qian Zhang et al (2022). DSCAM Deficiency Leads to Premature Spine Maturation and Autism-like Behaviors. J Neurosci. ;42: 532-551.
3. Ji Sun Yu , An Keun Kim (2010). Effect of combination of taurine and azelaic acid on antimelanogenesis in murine melanoma cells. J Biomed Sci. ; 17 Suppl 1: S45.
蛇足ながら、発生学的には、DSCAMは、免疫グロブリンファミリーに属する脳特異 的な蛋白で、前述したが、細胞の「自他の認知」に関わるいわゆる「self-marker 」の仲間に属し、蜜蜂、ショウジョウバエ、線虫など、脳を保有する凡ゆる動物 に存在する。

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