この「世紀の挑戦」については、米国のロスアラモス (ニューメキシコ州内の砂漠, ロッキー山脈の南端に位置した山岳地帯、 Mesa という台地の上にある標高 2,200m
の街 ) にある国立研究所
(第二次世界大戦中は、極秘の原爆開発施設) に長らく勤務するRamesh Jha 博士 (3D Docking
の専門家) の研究室に所属する卒業実習生 (Carson Gido) が、先ず挑戦してみる
そうだ。 もし、有意義な結果が出たら、我が「PAK研究財団」から、いくばくか
の奨学金 (PAK 奨励賞) を是非授与したい。。。 正確な "最小"「結合部位」が判明すれば、"より分子量の小さい" (=「BBB」を通過しう
る) イベルメクチン誘導体を将来、構築し得る。。。 若者 (Boys and Girls) の才能を伸ばす最大の武器は、奨励することである!
(注): イベルメクチン (分子量=875) は、標的であるPAK に結合すると共に、(それをユビキチン
化する) E3-Ligase にも結合し、「PAK のプロテオゾームによる分解」をもたら
す "キメラ" 、いわゆる 「PROTAC」の数少ない "医療向け" 市販製品の一つである。
詳しくは、「PROTAC」 (東大薬学の内藤教授は「Sniper」 と呼ぶ!) に関するブログ (March 6、2022) を参照されたし。
サリドマイドのアミノ誘導体 "Pomalidomide" (POM, 分子量=273) は 「奇形を誘導せぬ」かつ
BBBを通過しうるPROTAC (PAKの上流にある「JAK」と呼ばれるキナーゼを、E3-ligase
を介して分解する「キメラ」) であるが、(残念ながら) イベルメクチンに比べて、PAK遮断力が
弱い (水溶性の「MM」特効薬として市販されている) 。最近の研究報告(動物実験: 0.4 mg/kg) によれば、"喘息"にも効く(抗炎症作用もある)。 理想的には、イベルメクチ
ン分子上の「PAK 結合」(最小)部位
(理想的には分子量=250以下!)に、POM の「E3-ligase 結合」部位 (既知!
) を連結した "強力かつ脳関門を通過しうる)" 「キメラ」分子の構築を、我々は秘かに狙っている。
閃き: 実は、イベルメクチンの結合部位を同定するいわゆる「シリコン」Project
を考え出した折、ある新しいアミド誘導体 の合成が閃いた。ケトロラックのカ
ルボン酸に、ある市販の「E3-Ligase 結合体」(試薬としては、かなり高価!) を連結して、細胞透過性を飛躍的
に高めると共に、ケトロラックの直接標的 である「RAC/CDC42」 (PAKの直ぐ上流
) を「分解」し得る、言わば「一石二鳥」 (実際には、 一石で 三鳥!) の「魔法の弾丸」
を考えついた。 早速、ある有機化学者 (我
が輩の大学時代の後輩) に協力を求めて、そのアミド体の試作を依頼した。 このキメラの
生物活性、特に抗癌作用を調べるのが楽しみである。。。幸い、このアミド体の分子
量は (「15K」 同様) 500前後なので、「BBB」を通過可能、(脳腫瘍など) 様々な脳疾患の治療に
も役立つはずである。。。
速報: CSHL から出版されている最新の "AO" 研究報告/総説 (61ページに渡る"特許申請書"のコピーのごとき論文: bioRxiv、残念ながら、"PUBMED" には収録されていない
) によれば、米国のFCCC とボストンにある癌研との共同研究 (Jon Chernoff: 我が輩
のライバル!) で、初のPAK1-特異的なPROTAC (BJG 539, 一石一鳥!) の合成に成功した模様。いわゆるPAKI 特異的阻害剤 (NVS-PAK1-1, 分子量=480、 Novartis が2015年に開発されたが、体内で分解され易い!) とPOMをリンカーで連結した産物 (分子量》750、 研究用試薬?)。IC50 (抗癌作用) は約100 nM。我々自身の目標は、先ず IC50 をこれ以下に、出来るだけ下げて、「臨床でも有効な」ものを開発すること。。。
Development and utility of a "PAK1-selective degrader":イベルメクチンについて一言も触れていない「変な」論文!
Hoi-Yee Chow, Sofiia Karchugina, Brian J. Groendyke, Sean Toenjes, John
Hatcher, Katherine A. Donovan, Eric S. Fischer, Gleb Abalakov, Bulat Faezov,
Roland Dunbrack, Nathanael S. Gray, Jonathan Chernoff (2022)
極めて皮肉にも、人類史上最古のPROTAC は、1950年代に奇形児をもたらした「サ
リドマイド」である。 我々創薬学者は、過去の「苦い経験」から多くの貴重な英知を
学びつつある。
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