2022年11月11日金曜日

NF2 (Merlin) 遺伝子の欠損により起こる 病変は
「PAKの異常活性化」のみによるものではない!
(発癌キナーゼ) 「TOR 」の異常活性化も関与!

NF2 患者の寿命は、健常者の約6割に過ぎない、という話の科学的な根拠は、主に マウスモデルに基づいている。 野性のマウスの平均寿命は、約2。5年だが、NF2欠 損マウスの寿命は、約1。5年に短縮される。 我々は2003年ごろに、「Merlin が PAK阻害蛋白である」ことを初めて発見したが、実は、Merlin には、それ以外の (延命に繋がる "未知"の) 生物活性があるに違いない。
というのは、野性のマウスから、PAK遺伝子を欠損させると、平均寿命が 60% 程伸 び、4年程 (健康に) 生き続けるからである。 と言うことは、 NF2 (Merlin) 遺伝 子の欠損により起こる病変は、「PAKの異常活性化」のみではなさそうである!
実は (つい最近知ったが) 、2012年頃に、Jim Gusella の研究室 (Mass General) で、メルリンのもう一つの標的を見つけていた。 それは「TOR 」と呼ばれる発癌 キナーゼである (1)。 従って、メルリンは PAK 以外に、TOR を阻害しているよう である。 言い換えれば、TORの阻害剤 (例えば TORin 1 や ラパマインシン) によっ ても、更に、NF2 欠損のマウスの寿命を延ばす可能性がある。 実際、ラパマイン シンだけで、マウスの寿命を3割ほど延ばした、という報告がかなり昔にあった。 しかしながら、ラパマイシンには、免疫機能を抑えるという「副作用」がある。 実際、この薬剤は、臓器移植のために、患者の免疫機能を抑える為に、主として 利用されている。 従って、無菌の研究室では、(たとえ) 長生きしても、野外では、 COVID 等、様々な病原体によって感染死する可能性がある。 従って、免疫能を高 める「PAK遮断剤と併用する」必要がある。。。
参考文献:
1. MF James, E Stivison, R Beauchamp, S Han, H Li, MR Wallace, JF Gusella,et al (2012).
Regulation of mTOR complex 2 signaling in neurofibromatosis 2-deficient target cell types.
Mol Cancer Res.;10(5):649-59.

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