アフリカ大陸などで慢延する熱帯病の一つ、「眠り病」はトリパノゾ-マと呼ばれ
る寄生虫による感染によって発生する。この病気に対する特効薬の候補として、
Ascofuranone を、1996年に「再発見」したのは、我が輩の後輩 (東大薬学「微生
物」教室出身) である 北 潔 くん (寄生虫学の専門家、東大医科研、東大医学部
を経て、現在、長崎大学医学部) を中心とする共同研究チームである。 実は、
半世紀ほど昔 (1972年) に、このフレニルフェノール化合物 ( 詳しい化学構造に
ついては、右図を参照) を、糸状菌から、最初に発見したのは、東大農芸化学の
田村学造教授 (1924-2002) だった。 なお、兄・善蔵は東大薬学部の教授 (分析化学)。 発見当時は、主に「抗癌物質」として、扱われていた。
面白いことには、最近の研究から、この化合物が「PAK遮断剤」でもあることが判
明している。。。
さて、この化合物は、寄生虫のいわゆる「シアン耐性呼吸」を特異的に阻害し、我々
(哺乳類)の「シアン感受性呼吸 (酸化酵素) 」には、全く影響がない。 従って、(我々
にとっては) 「副作用ゼロの薬」である。 既に、山羊を実験動物に使用して、こ
の薬が微量で「眠り病」を完治しうることが実証されている。 最大の難関は、経
済/購買力のないアフリカ大陸の住民たちに、いかにして、「安価」に、この特効
薬を配布しうるか、である。 この有機合成は複雑で、不可能に近い! そこで、北く
んらは、つい最近、糸状菌から、この物質の生合成に関与する遺伝子を全て同定
し、それを「キッコーマン」と共同で、醤油などの発酵に使用する別の酵母/こうじカビに挿
入して、いわゆる「GM 酵母/カビ」で、大量生産を試みているようだ。。。我が輩の知
る限り、北くんと我が輩だけが、同じ「微生物」教室出身で、庶民のために「安
価な創薬」を目指している。。。
従って、 高価な「モノクローナル抗体」製剤を押し売りする最近の製薬会社の遣り口
は、我々の目には、「霊魂商法」をやる「旧統一教会」と、言わば「50歩100歩」
に見える。。。
若者よ、(真に役立つ) 新薬の開発研究には、 "貪欲" (金儲け) よりも、シュバイツァー博士の高邁な「ヒューマニズム」精神が必要だ!
北くんが、そもそも "薬学" をめざした発端は、 "シュバイツァー伝" にあった、と我が輩は聞いて
いる。。。
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