2022年10月21日金曜日

いざ、風立ちぬ!

2013年のアニメ映画「風立ちぬ」は、ゼロ戦闘機を開発した (東大出の) 若きエン ジニアの話だそうだが、プロペラ飛行機でも帆船でも、「風」が頼りである。
さて、 つい最近、英国議会では、保守党出の新首相 (リズ=トラス女史) が突如、 (経済) 政策転換 (Uターン)、然も「早期辞任 」したので、長らく野党に甘んじ ていた「労働党」に有利な、いわゆる「風立ちぬ!」現象が起こりつつある。。。
我々科学者の世界でも、「風立ちぬ!」現象が起こり始めている。。。 CC (Click Chemistry) の発明者、Barry Sharpless、が (発明から21年振りに) 2度目のノー ベル化学賞を受賞することになったからだ。しかしながら、(我が輩の知る限り) CC で合成された様々な (数万を超える) 有機化合物の中で、(実際に) 臨床に利用 しうるものは、残念ながら、未だ市販されていない!
そこで、「CC」受賞という「追い風」に乗って、我々の CC 産物 ("15K" というPAK遮 断剤) を、臨床テストを経て、「市販」を達成する努力を、来たる 11月から、(戦 闘) 開始することになった。 先ず、ストックホルムの「ノーベル財団」に隣接 するカロリンスカ研究所 (KI、医科大学) で、PAK遮断剤に関する特別講演をやり、 市外にある Biotech 会社や製薬会社と、「15K」の臨床試験に関する 交渉を始める計画である。 幸運なら、10年以内 (我が輩が死ぬ前)に、市場に出 るかもしれない。。。
実は、「15K」の開発には、10年ほどの歴史的背景がある。 先ず2013年に、インド の研究グループが、Ursolic Acid (UA) という (ステロイド系の) PAK遮断剤の抗 癌作用を、CC によるエステル化で200倍に高めた。 しかしながら、何故に抗癌作 用が高まったかは、全く不明のままだった。
2014年になって、我々は沖縄の琉球大学キャ ンパス内に、臨時にPAK研究センターを設立して、プロポリス中の (COOH を含む ) PAK遮断物質、コーヒー酸 (CA) やArtepillin C (ARC) 等の細胞透過性を高め るために、それを (水溶性を保ったまま) エステル化する方法を摸索している内 に、UA のエステル化の論文に到達した。 "2-Azoanisole" を使用してCC 反応をや ると、ARC の抗癌作用が100倍、CA の抗癌作用が400倍以上に、高まった! その 理由は、(我々の予想通り)、主に「細胞透過性」の飛躍だった。
2015年に、もう 一つ「意外な発見」があった。米国ニューメキシコ大学の研究室で、 "Ketorolac" と呼ばれる市販の鎮痛剤 (COOH を持つ「光学異性体」の混合物) の内、"R体がPAK遮 断剤"であることが発見された。 S体はCOX-2 阻害剤 (鎮痛剤)。 早速、 この R体のCOOH をCCでエステル化したところ、何んと、そのPAK遮断作用が "500 倍以上" に飛躍した (CC のギネス記録!)。 ノーベル賞に輝くPAK遮断剤「イベルメクチン」より、「15K」が更に勝る点は、分 子量が小さいため、BBB (血管脳関門) を自由に通過できるので、脳腫瘍など、様々 な脳疾患にも有効であることである!

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