この「悪液質」の治療薬として、最近、2種類の「PAK1 遮断剤」が、その有力な候補として、浮かび上がりつつある: 蛇毒由来のペプチド (Exedin-4) と鎮静剤「Ketorolac」の誘導体 (15K) である。
先ず、2014年に米国のチームによって、吉田肉腫を移植したラットをモデルにして、exendin-4 (3 micro g/kg) の投与によって、「悪液質」の治療に成功した(1)!
このペプチドは、実は蛇毒由来であるが、毒性は殆んど無い! 実際、このペプチドで (アルツハイマー病の) 線虫に処理すると、病気 (AD) が治るばかりではなく、転写因子「FOXO」 の核内移行を促進することにより、寿命を延ばす事が、2022年に中国のチームによって証明された(2)。 この蛇毒の "欠点" は、経口すると胃腸で分解されるので、"注射" しないと, 有効ではない! さて、経口できる有効な「悪液質」の治療薬はないだろうか?
ごく最近、その "有力な候補" が浮び上がりつつある。。。
REFERENCES:
1. MA Honors, KP Kinzig (2014).
Chronic exendin-4 treatment prevents the development of cancer cachexia symptoms in male rats bearing the Yoshida sarcoma. Horm Cancer. 5: 33-41.
2. X Song, Y Sun, Z Wang et al (2022).
Exendin-4 alleviates β-Amyloid peptide toxicity via DAF-16 (FOXO) in a Caenorhabditis elegans model of Alzheimer's disease. Front Aging Neurosci. 14: 955113.
2015年頃に、米国のニューメキシコ大学のグループが、鎮静剤「ケトロラック」 に、"PAK" 遮断により抗癌作用を発揮することを発見した(3)。
3. Guo Y, Kenney SR, Muller CY, et al (2015).
R-Ketorolac Targets Cdc42 and Rac1 and Alters Ovarian Cancer Cell Behaviors Critical for Invasion and Metastasis. Mol Cancer Ther. 14(10):2215-27.
しかしながら、この鎮静剤にはカルボン酸があり、細胞透過性が非常に悪い!
そこで、我々 (琉球大学構内に臨時に設立したPAK研究センター) は、その細胞透過性を飛躍的に増大するために、ノーベル化学賞に輝く「Click Chemistry」を介して、特殊なエステル誘導体 (15K) を、 2015年末に合成し、US 特許を取得した。
この誘導体はケトロラックの少なくとも 500倍、抗癌作用が強い (4)!
4. BCQ Nguyen, H Takahashi et al (2017).
1,2,3-Triazolyl ester of Ketorolac: A "Click Chemistry"-based highly potent PAK1-blocking cancer-killer. Eur J Med Chem. 126:270-276.
しかも、マウスモデルで "膵臓癌の増殖及び転移を完全に抑える" と共に、線虫の寿命を有意に伸ばした ("副作用" 無し!) (5)。
5. Nguyen BC, Kim SA, Won SM, Park SK, Uto Y, Maruta H. (2018).
1,2,3-Triazolyl ester of ketorolac (15K): Boosting both heat-endurance and lifespan of C. elegans by down-regulating PAK1 at nM levels.
Drug Discov Ther. 2018;12(2):92-96.
そこで、ごく最近 (「COVID 蔓延」が治まって)、15K の臨床テストの一環として、「悪液質」の治療薬としての効用を調べるアイディアが浮かび上がってきた。実は、ケトロラック自身にも、(癌に伴なう) 「悪液質」に対する治療効果があるらしい。 しかし、"副作用" も あるそうだ。。。
なお、最近の筑波大学のチーム研究によれば、Cachexia に必須であるTHG-1/TSC22D4 の燐酸(活性) 化には、RAS-PAK1-ERK シグナル経路が必須である事 (6) から、PAK1 を遮断すれば、Cachexia はある程度、予防出来る!
6. Nohara Goto, Hiroyuki Suzuki, Ling Zheng et al (2023).
Promotion of squamous cell carcinoma tumorigenesis by oncogene-mediated THG-1/TSC22D4 phosphorylation. Cancer Sci. 114(10):3972-3983.
0 件のコメント:
コメントを投稿