2025年8月9日土曜日

短評: 薬業界に "革命" をもたらす「カルボン酸」を持つ薬剤の "CC" (Click Chemistry) を介する "飛躍的" 進化:
1,2,3 Triazolyl ester or amido 化合物の合成!

2024年に, 米国のBarry Sharpless 教授らが、Click Chemistry (略してCC) 反応の開発及びその利用に関して、ノーベル化学賞 (2度目) を受賞した。 実は、 この CC は、 2001年に、彼が MIT に勤務していた頃に、発明した ("銅イオン"を触媒とする) 化学反応である。
2013年にインドの有機化学者チームがウルソール酸 (PAK1 遮断剤) を、CC 反応を介し、("アニソール" と脱水反応させ) エステル化して、その抗癌作用を (細胞培養系で) 100倍近く飛躍させた。 しかしながら、 一体なぜ、このエステル化が、抗癌作用を飛躍させたか (その "分子メカニズム" ) について, 彼らは、全く検討しなかったし、"特許" すら申請していなかった。。。
2015年に我々は、沖縄の琉球大学構内で、その論文を読んで、先ず気付いたことは、エステル化によって、酸性だった分子が中和され、(燐脂質からなる) 「酸性」の細胞膜を通過しやすくなった可能性、だった! この推量は、創薬学者の "一般常識" (ABC) に基づく。
そこで、先ず徳島大学の有機化学者と共同で、他の "PAK1" 遮断剤で COOH を持った化合物を 2、3、同様に "CC" でエステル化して、その抗癌作用及び細胞透過性を比較してみた。 先ず、ブラジル産のプロポリスの主成分 Artepillin C をエステル化して、15A (1, 2, 3-Triazolyl ester) を合成した。 エステル化により、その抗癌作用が100 倍に飛躍した! 次に、NZ 産 プロポリスの主成分 CAPE の原料であるコーヒー酸 (CA) をエステル化して、15C を合成した。 その結果、抗癌作用が400倍に飛躍した! 最後に、 ケトロラックと呼ばれる鎮静剤が、米国のグループにより、PAK1 遮断剤である事が明らかになったので、それも同様にエステル化した。
最終産物 (15K) は、何とケトロラックの "500倍" を越える抗癌作用を発揮した (CC の言わば「ギネス記録」を樹立!)。

結論/解説/展望:
いずれの場合も、抗癌作用の飛躍は、(主に) エステル化 による「細胞透過性」の飛躍にあった.
更に、15K の場合は、(癌の増殖を促進する) COX-2 を阻害する活性 (in vitro) の飛躍も観察。
つまり、2者の「相乗作用」をもたらす。実は、ケトロラックは光学異性体の R 型と S 型の混合物 (1:1) であるが、PAK1 遮断活性はR 型に、COX-2 阻害はS型に由来する。 従って、各々の異性体が 全く"別々" の機構で、活性化されて、相乗作用を発揮している事になる。
こうして、我々は、COOH を有する化合物の (CC を介する) エステル化により、薬物 (健康長寿の薬) の大巾な「化学的進化」を確立!
次の「挑戦」は、アミノ基を持つ (????????? )とのアミド結合により、同様な進化が成し遂げられるかを、試すことである。。。

Footnote:
さて、鎮痛剤「アスピリン」 (アセチルサリチル酸) にも、カルボン酸があるが、これを同様に CC でエステル化しても、僅か "5倍" にしか作用は増強されない。 従って、作用の「飛躍度」は、(結婚相手の如く) "相棒" の種類によって、「段違い」である。。。従って、有機化学の世界でも、"理想の相手"を見つける事が極めて肝心! 言わば、キューリー夫妻 (マリーとピエール) の如き組合せが理想的であろう。。。

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