今年のノーベル医学生理学賞は、米国カルフォルニア州の研究者2人に授与される。受賞者は、米UCSFのデービッド・ジュリアス教授と、米Scripps 研究所のアーデム・パタプティアン教授。 業績は 「温度・触覚の受容体の発見」。熱さや冷たさ、痛みなどを感じる「温度センサー」 (TRPV1) や、皮膚にかかる圧力を感じる「触覚センサー」 を発見したことが評価された。
「温度センサー」 は、単に温度を感じるだけでなく、やけどや凍傷などの危険を避けるための情報を脳に伝え、命を守る役目もある。ジュリアス氏の研究チームは1997年、唐辛子の成分 「カプサイシン」 に反応して、痛みを引き起こすセンサーを見つけたと報告した。これが40度を超す熱にも反応したため、温度センサーの一種であることがわかった. TRPV1 拮抗体から、鎮痛剤などを開発する努力が長年進められているが、副作用 (温度感受性) を軽減するのが中々難しい。。。 我田引水になるが、"PAK 遮断剤" には、抗癌作用などがあるばかりではなく、高温にも耐性 (夏バテ予防) 、鎮痛作用もあるので、明らかにTRPVI 拮抗体よりも優れている!
実は、カプサイシンにも「PAK」遮断作用がある。2008年に韓国のグループによって、この物質が「PAK」を直接活性化するGタンパク質「RAC」を阻害することによって、「PAK」依存性の固形癌であるメラノーマの転移を抑制することがわかった。
「カプシエイト 」(「辛くない」誘導体)
「癌に効く、予防に良い!」と言われても、「甘党」の我が輩には、あんなに辛
いキムチを毎食ムシャムシャ食べるわけにはいかない。さて、1985年頃、矢
澤 進 のグループ(現在、京都大学農学部教授)が赤トウガラシの研究中、タイ
産の辛くないトウガラシを見つけ、「CHー19甘」と命名した。その後、京都
大学農学部教授の伏木 亨研究室や渡辺達夫 (現在、静岡県立大学) との共同研究
により、この変わったトウガラシには、カプサイシンの代わりに、その誘導体で
あるカプシエイトが含まれていることが判明した。その構造上の違いは、カプサ
イシン中にあるアミド結合が、カプシエイト中では、エステル結合になっている
。言いかえれば、アミド結合のアミノ基が酸素に置換してエステル結合になって
いるに過ぎない。 両方とも同じレセプターに結合するが、カプシエイトは辛味の
感覚を全くもたらさない。しかしながら、カプサイシンと同様、交感神経を刺激
して、脂肪燃焼や体温上昇を促進する作用があることがわかった。
2006年には、これらのグループの共同研究によって、カプシエイトの経口投
与(10 mg/kg)を受けたマウスは、無処理のマウスに較べて、ずっと長時
間遊泳することができることが判明した。このスタミナ効果は、カプシエイトが
脂肪燃焼を促進することによって、グリコーゲンの消費を遅らせるためだ。
さて、カプサイシンやカプシエイトには、「PAK」遮断作用ばかりではなく、抗癌キナーゼ「AMPK」を活性化する作用もあることが2
005年に判明していた。「AMPK」活性剤は一般に、(グリコーゲンや糖の燃
焼の代わりに) 脂肪の燃焼を促する作用がある。従って、カプシエイトの「スタ
ミナ」(持久力) 増強作用は、主に「AMPK」活性化によるのかもしれない。
仮に、オリンピックのマラソン競走、あるいは1500メートル競泳の決勝前に、
「キムチ」やカプシエイト(あるいは「CHー19甘」)をどっさり食べた場合、
「ドーピング法」違反になるだろうか? 往年の「フジヤマのトビウオ」古橋広
之進氏(80歳)が 十年ほど前、ローマで急逝されたそうだが、戦後まもなく古橋や
橋爪四郎が1500メートル競泳で活躍していた頃、豪州に大強敵が現れた。菜食主義者のマレー・ローズだ。ローズ(1939ー2012)は1956年のメルボルン五輪および1960年のローマ五輪の1500メートル競
泳で連勝して、圧倒的なスタミナを示した。その成功の秘密(兵器)は一体何だっ
たろうか? その後、彼は米国のカルフォルニアに移住し、70歳を越えても
「マスター」部門の競泳で、あい変らず活躍していたが、とうとう白血病で亡く
なった。 彼のあだ名は「稲妻の海藻」だっだ。 ワカメや昆布が主なスタミナ源
で、恐らく「PAK遮断作用のあるフコイダン」が原動力だったらしい。
さて、2003年にイタリアのジョバンニ・アペンディノらは、カプシエイトや
その誘導体が抗癌作用を示すことを、少なくとも細胞培養系で確認している。従っ
て、将来いつか、この辛くない「CHー19甘」をたっぷり食べて、癌やNFの
食餌療法が臨床に利用される日がくるかもしれない。日本では十数年前から、食
品会社「森永製菓」と「味の素」が共同で、「CHー19甘」製品を主に「体重
減量」促進剤(肥満対策の一環)および「冷え」解消剤として市販している。
♨「熱い温泉に浸かると、寿命が伸びる」と良く謂れる。体温の急上昇により、熱ショック蛋白 (HSP) 遺伝子が活性化され、(熱に弱い) 様々な「長寿蛋白」が
保護されるからである。しかしながら、HSP遺伝子の発現は通常、PAK により抑制されている。従って、温泉に漬かる前に、PAK遮断剤を経口すると、HSPの発現が
高まり易く、いわゆる「温泉効果」が倍加するはずである。。。
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