何度も前述したが、線虫やマウスのPAK 欠損株は、野生株に比べて、約6割長生きする! 逆に言えば、PAK 過剰 (依存) 難病 の患者の平均寿命は、健常者 (PAKレベルが高くない人々) に比べて、4割ほど短い! 勿論、最終的な寿命は、PAK レベルにほぼ反比例する。 例えば、NF2 (脳内に良性の腫瘍を持つ) 患者の場合、その寿命は (我が輩の知る限り) 15年から70年と、症状の程度や(脳外科)手術による後遺症によって、かなり巾が広い。 豪州シドニーに住んでいた少年は、9歳頃にメニンジオーマのため、視力を失い始め、米国ボストンにある (ハーバード大学病院 =Mass General) で何らかの治療を受けていたようであるが、ある朝、15歳でポックリ他界した (直接の死因は、併発の心臓肥大だった)。
米国テキサス 州ダラスに住んでいた デニス=テリル嬢は、皮膚科の医師を父親、看護婦を母親に持つかなり裕福な家庭の娘で、水泳の選手だったが、13歳前後に聴力を失い始め、手話の助けを借りて、普通の高校を見事に卒業したが、20歳前後で、それまでに受けた種々の脳外科手術による後遺症のため、全身麻痺となり、その後の余生 (12年ほど) をベッドに寝たまま過ごすことになった。
この両親は、NF2 患者全体のために、米国で最初のNF財団 (テキサス支部) を発足し、NF 研究のための資金を募金するために、テニス大会やゴルフ大会 (Denise Terrill Classic) を毎年、開催していた。我が輩のグループも、NF2蛋白がPAK遮断蛋白であることを発見した際 (2004年頃) 、この財団から、幾ばくかの研究助成金をもらった、と記憶している。この後しばらくして (恐らく2007年の渡米時に)、ダラスのテリル邸を訪れて、既に 「全身麻痺」になったデニス嬢を見舞った経験がある。その後、2年ほどして、デニス嬢は、32歳で安らかに他界した。
一番残念至極だったのは、藤沢製薬が開発した 天然抗癌剤「FK228 」(環状ペプチド、HDAC阻害剤) が 「PAK遮断剤」でもあることを、我々のグループが発見したにも拘らず、それが (あいにく) BBB (血管脳関門) を通過しないため、脳内のNF 腫瘍には、無効であることが判明したことだった! ご両親を始め、多くのNF 患者やその家族が、ひどく失望した。。。
そこで、 我が輩は18年間勤めた豪州の国際癌研 (「市販天然物」の研究を軽視する一種の「象牙の塔」!) を 遂に退官し、ドイツのハンブルグ大学病院 (UKE) にNF 研究 (客員) 教授として転勤し、少なくともNZ産のプロポリス「Bio 30」が (マウス実験で) NF腫瘍の増殖及び転移を抑えることを実証した上、NZ の養蜂家「マヌカヘルス」の協力を得て、(主に) NF 患者とスイゾウ癌患者を対象にした臨床テストを2007年以来、十数年続けている。最近は、プロポリス以外に、海藻類由来のフコイダンを始め、様々な天然PAK 遮断剤が同定され、NF ばかりではなく、(COVID 肺炎など) 様々なPAK依存/過剰症の治療に役立ち、これらの患者の寿命を延ばしつつある。
ごく最近、9月末に開催される「老化のメカニズム」に関するCold Spring Harbor
(NY 郊外) Meeting に招待された。 "老化における PAKの役割" を大いに強調したい! と思ったが、油断禁物! 参加費だけでも何んと、15万円以上! いわゆる「禿鷹」学会!
然も、豪州からNY までの往復旅費を合わせると、30万円を越える!
0 件のコメント:
コメントを投稿