2023年12月28日木曜日

"茸" (キノコ) の旨味成分と "薬用" (PAK遮断) 成分
蛍光茸 Luciferase で "PAK遮断剤" スクリーニング

遠藤さんは, 幼い頃, (食べて美味しい) "ハエトリシメジ" (茸) が "人畜無害" なのに, 何故, 蝿を殺すのか, その理由について, (子供心に) 不思議がったそうだ!
そこで, 東北大農学部の学生時代に, その謎を解き明かそうと試みたが, (残念ながら) 徒労に終わった!

その後 (1960年ごろ), 東北大薬学部の研究グループ (専門家!) によれば, ハエトリシメジ (茸) の旨味成分が, 皮肉にも, 蝿には有毒! その成分は, Tricholomic acid (アミノ酸の一種) で, グルタミン酸 (味の素) より 旨いが, この茸はイボテン酸という"旨味毒"も含み, 食べ過ぎると "悪酔い" するから 要注意!!

実は, (グルタミン酸が結合する) "GABA 受容体" と呼ばれる脳内の神経受容体 (イオンチャネル) は, 我々脊椎動物と 無脊椎動物 (昆虫や線虫など) とでは, 構造/機能がはっきり違うようである. 例えば, 殺虫剤の"イベルメクチン" は, 線虫の "GABA 受容体" に結合すると, 虫を殺すが, 人畜には "無害" である (実は, PAKを直接破壊して, "健康長寿" に役立つ!) . 同様に, Tricholomic acid が蝿の"GABA 受容体" に結合すると, 殺虫作用を発揮するが, 人畜には無害どころか, "旨味" を発揮!

松茸には (椎茸同様) , 旨味成分(グアニル酸=イノシン酸に似た核酸の一種 ) があるが, それ以外に薬用成分がある. 8個のアミノ酸からなるペピチド (SDIKHFPF) であるが, 何と "PAK遮断" 作用がある. 炎症を抑制する作用があり, PAKの下流にある "COX-2" の発現 (痛み) を抑える. 癌の治療にも有効であるはず!
参考文献:
Mengqi Li, Qi Ge, Hanting Du, Songyi Lin (2021).
Tricholoma matsutake-Derived Peptides Ameliorate Inflammation and Mitochondrial Dysfunction in RAW264.7 Macrophages by Modulating the NF-KB/COX-2 Pathway. Foods. 10: 2680.

緑色の蛍光を発するキノコの多くは, 実は薬用成分「3-OH Hispidin」(= PAK遮 断剤, ルシフェリン) を含み、この成分が 蛍光キノコが持つ 酵素 「ルシフェラーゼ」 によって酸化されると、緑色の蛍光を発する。 従って, 夜中に 怪しげに光るキノコは, 毒キノコではなく, 食用/薬用キノコである. 詳しくは: https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20150624_02/index.html
REF:
Be Tu PT, Chompoo J, Tawata S. (2015).
Hispidin and related herbal compounds from Alpinia zerumbet inhibit both PAK1-dependent melanogenesis in melanocytes and reactive oxygen species (ROS) production in adipocytes.
Drug Discov Ther. 9: 197-204.
"Hispidin" (コーヒー酸の誘導体) は沖縄名産の "月桃" にも含まれる成分で, 線虫の寿命を延ばすことが , 10年ほど昔, 琉球大学のグループ (上記の多和田ら) によって証明されている!

1960年代に, 蛍光オワンクラゲから"GFP" (Green Fluorescent Protein) を精製し て, 2008年にノーベル化学賞をもらった下村 脩 博士 (1928-2018) の後年の趣味 は, "蛍光茸" の研究だった.
恐らく, この種の茸が食用/薬用であることを悟り, 試食/常食 していたためか, (少年時代に長崎で, "原爆" に被曝したにも拘らず) 90歳まで健康で長生きした!

PAK遮断物質の簡便な (蛍光) スクリーニング法:
このOxidase=Luciferase の遺伝子が, ごく最近, ある蛍光茸からクローンされた ! それを(Biotech 向けに) GM大腸菌で量産できるはず... そこで, この酵素と Luciferin (3-OH Hispidin) を組み合わせて, PAK遮断物質の簡便なスクリーニ ング法を考え付いた. 先ず, PAK とその抗体の結合体に Luciferin を飽和させる . 次に, PAKを阻害すると思われる物質と混合し, もしその検体がPAK遮断剤なら ば, (その親和性に比例して) Luciferinが "PAK" から遊離するはずである. この 遊離した "Luciferin" 量をLuciferaseと反応させて, " 蛍光" で定量する, という 方式である.
この蛍光法は "アイソトープ" や "HPLC" 無しに測定が可能!

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