美白/育毛/消炎剤 "Ketoconazole" (KCZ) は, 1977年にベルギーの製薬会社"Jannsen"によっ
て, 特許化され, 1981年に真菌による炎症や発毛/育毛剤として, 主に化粧品の成
分として市販され始めた.
2001年に韓国のグループが "KCZ" の美白作用に関する特許を取得している. 従っ
て, この特許を信用すれば, "KCZ" は明らかにPAK遮断剤である!
実は, 2015年に沖縄の琉球大学キャンパス内に, PAK 研究センターの支部を設立後
間もなく, 我々は, 様々な天然PAK遮断剤, 例えばNZ や沖縄産のプロポリスなど
が, 育毛作用や美白作用を発揮することを発見した.
更に, その後, (KCZ に関する) 様々な一連の興味深い薬理作用が発見され始めた. その一つは, 消炎作用に関わる作用である. 2019年になって, 中国の研究チームが, KCZ に, 様々な炎症に伴う痛みの要因になるプロスタグランディンを合成する酵素
(COX-2) の遺伝子発現を抑えることを発見した (1). 興味深いことには, COX-2は
, 様々な癌や固形腫瘍の増殖に必須であることが, 既に知られているばかりでは
なく, その遺伝子発現がPAK依存性であることも既知である. 従って, 疑いもな
く, KCZは, 合成の "PAK" 遮断剤である.
REF:
1. Y Chen, HN Chen, K Wang et al (2019).
Ketoconazole exacerbates mitophagy to induce apoptosis by downregulating cyclooxygenase-2 (COX-2) in hepatocellular carcinoma. J Hepatol.;70: 66-77.
さて, 有機化学に多少通ずる読者なら, KCZが, CMLの特効薬である "Gleevec" に
化学構造が類似していることに気付くだろう. 実際, Gleevec に耐性になった CML
は, KCZ で治療しうる.
ごく最近, 更に, 面白い事が発見された. 前述したが,
ビタミンD3 は天然のPAK遮断剤であるが, 特に癌細胞内の "CYP24" と呼ばれる酵素
によって, 水酸化されて, 不活化する. そこで, CYP24の阻害剤や, その遺伝子の
発現を抑える薬剤の発掘への努力が, 過去十数年に渡って, 世界中で進行中であ
るが, その一環として, 2022年に, 冨山県立大学の有機化学者, 安田 佳織 (Kaori) 准教授 (京大工学部出身) を中心
とするチームによって, "Aptamer" と呼ばれる一連の (70個の塩基からなる) DNAを
骨格としたCYP24阻害剤が開発された (2). その研究の際, KCZ を"Positive コ
ントロール" として, 使用していることに, (我が輩は) 最近になって気付いた.
言い換えれば, KCZ は, 前述の Genistein (大豆由来のイソフラボン) と同様, CYP24を
直接に阻害する!
目下, このグループ等と共同で, Genistein 以上に強力なCYP24遮
断剤の発掘を進めている.
REF:
2. M Biyani, K Yasuda, Y Isogai et al (2022).
Novel DNA Aptamer for CYP24A1 Inhibition with Enhanced Antiproliferative Activity in Cancer Cells. ACS Appl Mater Interfaces 14: 18064-18078.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35436103/
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