2024年5月29日水曜日

“Ritonavir”(AIDS・COVID治療薬):
(CYP24)遺伝子の発現を抑え、D3の作用を増強する ペプチド型 “PAK遮断剤”!
(血管脳関門を通過する)“AR-42”は、“脳腫瘍”の治療にも有効!その “細胞透過性”を高める作戦を検討中!

その昔(1980年代)、世界中にAIDSが流行した頃、米国の製薬会社(Abbott)がその治療薬として、“Ritonavir”(RNV)と呼ばれる合成ペプチドを開発し, 最終的には、ファイザー社が、1990年代に、市販に成功した。
ところが、2006年になって、高知大学の研究グループが、RNVに、ビタミンD3を不活化する酵素(CYP24)遺伝子の発現を抑える作用を発見した (IC50=100 nM)! 従って、RNVを併用すれば、ビタミンD3の抗癌作用が、増強される! 更に、最近には、
“COVID” 治療薬としても、有効であることが判明した。
前述したが、CYP24遺伝子の発現は、PAK依存性である。従って、RNVが “PAK遮断剤”である可能性が極めて高い!
REF:
T Ikezoe 1, K Bandobashi, Y Yang, et al(2006).
HIV-1 protease inhibitor ritonavir potentiates the effect of 1,25-dihydroxyvitamin D3 to induce growth arrest and differentiation of human myeloid leukemia cells via down-regulation of CYP24.Leuk Res 30: 1005-11..

RNVの分子量は約700だが、最近、COVID治療薬として、ファイザー社により、分子量が約500の “Paxlovid”(dipeptideの一種)が開発され、市販されている。もっとも、これは、ジェネリックではないので、高価。ただし、米国内では、 COVID患者のみには“無料”で支給!

https://bpsbioscience.com/ar-42-osu-hdac42
更に面白いことが判明した。実は、2010年頃に、AR-42(別名、OSUHDAC42)と呼ばれるHDAC阻害剤(IC50=20nM)が、Ohio州立大学(OSU)のグループによって開発された。この阻害剤は、結局、(HDAC の下流にある) PAK1を遮断する。その化学構造をみると、いわゆる “dipeptide”(amide結合が2カ所)である。分子量は更に小さく、300前後である。 この薬剤は、まだ臨床用には市販されていないが、我が輩の “感”(水平思考)が正しければ、CYP24遺伝子を遮断する可能性がある。。。
"AR-42”は(分子量が小さいから)、“BBB”(血管脳関門)を通過し、様々な“脳腫瘍”の治療に役立つはずである。 実際、2013年に、OSUのグループによって、NF2腫瘍の患者に効くことが臨床で証明された。
文献:
S S Burns, EM Akhmametyeva, JL Oblinger, et al(2013).
Histone deacetylase inhibitor AR-42 differentially affects cell-cycle transit in meningeal and meningioma cells, potently inhibiting NF2-deficient meningioma growth.Cancer Res. 73: 792-803.
実は、AR-42は“細胞透過性”が悪い。そこで、それを高める作戦を検討中!
なお、RNVの化学合成過程(US6407252B1)の中間産物の中に、分子量が500程度で、かつ“細胞透過性の高い”CYP24阻害剤が見つかる可能性あり!
最後に、2012年になって、防衛大学校の研究チームによれば、RNVがHDAC遺伝子の発現を抑えることが判明した!従って、RNVは、明白に“PAK遮断剤”である!
文献
A Sato, T Asano, K Ito, T Asano(2012).
Ritonavir interacts with bortezomib to enhance protein ubiquitination and histone acetylation synergistically in renal cancer cells。Urology; 79: 966.

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