2023年3月1日水曜日

納豆由来の「ビタミンK2」 (メナキノン 7) :
「健康長寿」をもたらす「PAK 遮断剤」

ウニの卵を材料した発生研究で有名な "団夫妻" (勝磨 とジーン) に関連する "エピソード":

半世紀ほど昔の出来事である。 我が輩が東大の大学院 (博士課程) を終え、米国の留学先も決まった 頃だ。 ある日の午後、指導教官の水野伝一教授から、「君に見せたい (団さ んから受け取った) 写真があるから、ちょっと教授室に来たまえ」という伝言を、 秘書 (津田塾出身の才女) を通して受け取った。 実は、当時、都立大学の学長 をやっていた団勝磨教授と、水野先生が親しかった。 教授室に行くと、ウニの卵 の写真ではなく、何んと縁談の話がもち上がった! 「君は知っているかどうか わからないが、団さんの奥さんは、ジーンという米国の女性研究者で、目下、お 茶大の教授をしているが、団さんの研究室で修士を修了した女性で、米国で研究 を続けたい、と考えている人がいるんだが、君、夫婦で渡米したらどうかな?」。 全く、寝耳に水だった!
実は、以前に、「結婚する相手がいたら、一緒に研究できる相手を選びたい」 と先生にもらしたことはあったが、そんなに急に、話が回って来るとは想像して いなかった。そこで、「両親と相談してみます!」と言いながら、有り難く、そ の女性の写真や履歴を一応受け取った。しかし、その話はやや早急だったし、実 は、我が輩には、いわゆる「意中の人」がいた。その人には、自分の気持を直接、 未だ打ち明けたことはないが、それとなく付き合っていた。。。 同級生の一人 で、大学院に遅れて進学してきた女性だった。 実は、この女性に関しては、流石の先生も「灯台下暗し」だった! 所属は「水野 研」だったが、 医科研へ出向して研究していたからだ。。。 両親からは、「結婚は時期早尚だ! 米国で定職が決まってから、結婚相手を探したほうが、賢明だ」と、忠告された。 そこで、その"縁談"は、(団/水野両先生には、大変申し訳けなかったが) それっ切りになった。
ただし、その話を、我が輩の「意中の人」に打ち明けるチャンスを得た! だが, 実際に、我が輩が (豪州で) 「結局 "18年に渡る" 定職」と永住権を得たのは、 45歳直前だった、 つまり、最初の縁談の話があってから "15年間" も過ぎた後の話 で、(当然のことながら) 誰も当てにはしていなかった! しかしながら、(結局、 結婚には至らなかったが) その「意中の人」とは、長らく、主に海外 (西独や米 国) で、(研究や登山などを通じて) 親しくお付き合いをさせてもらった。。。
特に、 渡米から10年ほど月日が経った後、 我が輩がミュンヘンのMAX-PLANCK 研究所で、初の「アクチンを燐酸化する キナーゼ」 (後に、AF-Kinase と呼称) を "Physarum" と呼ばれる
アメーバ中に発見した折、 (このアメーバを偶々扱っていた) 彼女に、日独「共同研究の一環」として、 しばらく研究所に滞在し、 "臨時の助手" を務めてもらったお礼に、 国境のアルプスの山々を (週末毎に) 案内して回った懐かしい思い出が残っている。

その女性は (その20年後、つまり20年ほど昔)、納豆の主成分で、 "PAK遮断剤" である「メナキノン-7 」(ビタミン K2) がスイゾウ癌などの増殖を抑えるという、貴重な発見をして数年後に、 (研究生活を) 定年退職。 (この発見が一種の「切っ掛け」になったのか) ごく最近、中国のグループにより、ビタミン K2 (濃度 10 nM !) により、線虫の寿命が 3-4 割も延長すること が 実証された (1)!
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35495953/
1。 Z Qu, L Zhang, W Huang, S Zheng (2022)。 Vitamin K2 Enhances Fat Degradation to Improve the Survival of C. elegans。 Front Nutr. 9: 858481.


前述したが、ビタミン K2 の含量が最も高い納豆は、「ほね元気」と呼ばれる「ミ ツカン」製品で、ビタミンK2 を通常の2倍以上生産する「納豆菌種」を使用して いる。 勿論、「骨へのカルシウム吸収」を促進するばかりではなく、癌など様々な 難病を予防し、健康長寿に寄与する。
なお、「ビタミンK2」は、AMPK/SIRT1 シグナル (いわゆる「健康長寿」経路) を も促進し、間接的にも、 PAKを阻害/遮断している。
我が輩の個人的な意見 (=我田引水) であるが、これらの発見の方が、(故) 田村照子女史らのドイツにおける発癌キナーゼに関する「基礎」研究よりも、ずっと "癌患者"や その他の "難病患者" に役立つ成果である、と思う。 奇遇であるが、この女性も田村さんも同じ「東大医科研」で(所属学部は違うが) 博士号を取得した!

さて、団さん夫婦の話に戻ると、団勝磨は、1929年、東京帝大の動物学科卒 で、発生学の権威ハイルブランを頼ってペンシルベニア大の大学院に留学。ウニ の細胞を生かしたまま分裂させる実験法を確立し、細胞核分裂の生化学的研究へ の道を拓いた。東京帝大の副手、旧制武蔵高の講師、東京帝大の講師などを経て、 東京都立大学教授、のち総長、日本動物学会会長。
米国出身の妻 「団ジーン」(Jean Clark Dan; 1910-1978)との間に5人の子 をもうけ、娘の「団まりな」も生物学者 (1940-2014)。 甥は作曲家の団伊玖磨。ジーンは勝磨 より6歳下の科学者で、大学院生のときに、ウッズホール海洋生物学研究所(MBL) の夏期講習に参加して勝磨と知り合い、三崎臨海実験所勤務の辞令により、1934年 に一旦帰国した勝磨が、1936年に再渡米して結婚、翌年より日本で暮らした。 つまり、太平洋戦争中も日本 (敵国) 内で生き抜いた! 三 崎研究所でウニの受精の研究を始め、世界で初めて精子の先体反応を発見して1954年 に発表、その後、お茶の水女子大で教鞭を取った。
その生涯については、評伝『渚の唄 ― ある女流生物学者の生涯』(加藤恭子 著、講談社、1980年) に詳しい。
我が輩は、 (自分にしかできぬ「偉業」をめざす)「研究アニマル」で、(団夫婦とは違い) 出産や育児には全く 興味を持てなかったので、 45歳前後で、ようやく定職を得た時点で、(メルボルン の大学を首尾良く卒業した 4名の息子や娘 (内3名は博士!) を "女手一つ" で 立派に育て上げた) ギリシャ系の米国婦人、数学の 教師 と結婚した。。 その中でも「お宝」は (ボストン生まれの) "末っ子" (Danny) で、 目下、英国の名門 "ケンブリッジ大学" の教授 (数学)。 その息子 (Linden) も同じ大学の数学科で、「フィールズ」賞などをめざして、 頑張っている。。。 我々の人生は全く "予期せぬ"「コペルニクス的転回」をしつつある! 我が輩は (算数には強かったが) 数学はやや苦手なので、息子たちとは (難しい) 数学の話はせず、専ら英米を巡る リベラルな「政治談議」を楽しんでいる。。

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