2023年1月6日金曜日

「性」決定の仕組み: X (性) 染色体と Y (性) 染色体の
"基本的な" 違い (哺乳類: 生存 VS 進化/老化)
Y 染色体上の「SRY 遺伝子」の不思議な (転写) 機能!
鳥類や両生類 は、ZとW (性) 染色体をもち、
ZZでオス、 ZWでメス!!

人類を含めて「哺乳類」では、性染色体がXXで女性、XYで男性となるが、Xが2本あることで女性とな るのだろうか、それともYがあれば男性となるのだろうか?
クラインフェルター症候群という染色体異常症候群があり、この患者の性染色体 は一本多いXXYである(染色体総数は47本)。クラインフェルター症候群患者の身 体的な特徴は「男性」である。一方、ターナー症候群 (?) という染色体異常症候群が あり、この患者の性染色体はXが1本しか持っていない(染色体総数は45本)。ター ナー症候群患者は身体的には「女性」を示す。 つまり、Xが2本あっても 「Y」があれば「男性」であり、Xが1本しかなくても 「Y」を持たなければ「女性」である。
結論的には、人類は基本的に「女性」であり、Yが "機能"すると「男性化」する
人類のX染色体の大きさはYに比べて非常に大きく、「生命活動に必要な」遺伝子を多く含むが、Yに個体の生命活動に必須な 遺伝子は存在しない(女性はYを持たないが、個体の維持には何の問題もない!)。 Y 染色体の欠損は、いわゆる「細く長く」生きる 人生航路に役立つ!
更に詳しく調べてみると、 男性化するには, Y染色体の内、ほんの一部 (SRY 遺伝子) のみで十分であることが判明した! 染色体がXXなのに男性である人がごくまれに存在する。 この男性の場合、Y染色体の一部分 (SRY) が X 染色体に移って(転座して)いた。
実験的に、マウスにSRY領域を導入してトランスジェニック (GM) マウスを作成したところ、染色体はXXであるのにオスとなったことからも、SRY領域が男性化をする遺伝子を含んでいることが明らかとなった。 この"SRY領域" から発現する遺伝子産物は "転写蛋白" であり、男性化を引き起こすための多くの遺伝子 (= "SOX9" を含めて、3000 以上の遺伝子) の発現を調節している。
さて、2021年に発表されたドイツの研究グループの動物実験によれば、 豚のSRY 遺伝子の真ん中にある "high mobility group" (HMG) を CRISPR-Cas ribonucleoproteins による「遺伝子編集」 (2022年のノーベル賞の対象!) をすると、その下流に、 いわゆる「Frame-Shift」が発生して、この遺伝子が機能しなくなる、ことによっ て、雄の豚が「雌」に豹変することが判明した (1) !
人類の場合、 100 m 競走で、男性「トップ」走者は10秒以内、女性「トップ」走者 では11秒を要する。 つまり、Y染色体上のSRY 遺伝子は、少なくともスタートダッ シュ (瞬発力) という「進化」機能に寄与していることが分かる。
マラソンの世界記録: 男子は2時間1分 (121 分)、 女子は2時間14分 (134分)、両 方ともケニアの選手! 従って、瞬発力ばかりではなく、「持久力」でも男性が 10% 程勝っている。これも Y 染色体上の「SRY 遺伝子」のお蔭
我が輩の個人的意見 (偏見?) によ れば、「独創性」(=独創的な発想) にも大いに寄与している (つまり、ガリレオやニュートンやアインシュタインの如き「天才」あるいは「奇 想天外な発想」をする人物は、女性からは出現し難い!) 。
米国 UCLA の研究者からの報告 (2006年) によれば、SRY は脳の機能、特にドーパ ミンなどのカテコールアミンの合成に必須なチロシン水酸化酵素 (遺伝子) の発現 にも必須である。 従って、(例えば、雄のマウスの場合も) SRY が欠損すると、脳 の機能が鈍ぶり、(血圧が下がり) 運動も鈍くなる。 ドーパミンとは、快楽ホルモンの一種で、(発明や発見に繋がる) "奇 想天外なアイディア" 等が閃くと、このホルモンのため、快楽を感じる。。。
しかし、心配ご無用! ドーパミン自体は (決して) 寿命を縮めない! ニュート ンもアインシュタインも長生きした! 発明王「エジソン」も冒険家「ヒラリー郷」も長生きした!
さて、人類の場合、(逆に) 女性のほうが、男性よりも、平均寿命が数年 (ca 10%) 長い。 従って、SRY 遺伝子は、(PAK や TOR) 遺伝子 同様、幾らか「老化」にも寄与していることが、強く示唆される。。。
2019年に発表された中国の研究グループによる研究結果によれば、SRY 遺伝子のHMG 部分に類似した遺伝子 (SOX9) は、発癌/老化キナーゼ (TOR) 遺伝子を活性化す るそうである (2) 。。。つまり、男性の方が癌やCOVID などにより死亡する確率 が高いということらしい。。。 要注意!
つい最近、インドで大変珍しい「性転換」例が発見された。若い既婚の女性だが、 染色体タイプは XY (「男性」タイプ)と判明! そこで、 Y 染色体の SRY 遺伝子の塩基 配列を調べてみると、HMG ドメインの76番目のアミノ酸 がARG からSER に変換す る突然変異が発見された! この転写蛋白は通常、カルモジュリンに誘導されて、 細胞質から核内に入るが、この変異のために、核内に入れなくなり、転写蛋白と しての機能を果たせなくなった (機能的に "SRY欠損"!) ために、「女性」になって しまった! 願わくば、 この (XY) 女性の「健康長寿」を望む。。。
ネパール地方に昔から伝わる漢方植物 の中に含まれる "Bellidifolin" (フラボノイ ドの一種) には、一連の薬効 (例えば、抗癌、抗糖尿病、抗炎症、鎮痛などの作 用) が知られているが、ごく最近 (2020年) 、中国の研究グループによって、こ の化合物が、PAK の上流にあるキナーゼ (JAK) や 下流の酵素 (COX-2) などを抑 える、 更に、SRY 遺伝子に (機能的に) 似た 「SOX9」 遺伝子 (染色体 「17 」 上に存在!) の発現を抑えることによって、肺癌細胞 (A549) の増殖を抑えるが、 正常な細胞には何ら影響を及ぼさない、ことが判明した (1)。 従って、この漢方 薬が何らかのメカニズムによって病原/老化キナーゼ 「PAK 」を遮断している可 能性が浮上しつつある。。。更に、「哺乳類への進化」の過程で、「染色体17」 上の "SOX9" 遺伝子に、ある種の変異が生じ、いわゆる(男性) 染色体 Y に転座した 可能性もある。。。
なお、爬虫類の オスメス "比"は (孵化) 温度次第 (低温 あるいは高温では、雌だけ!)。 つまり、例 えば「氷河期」には雌ばかりで、生殖ができないから絶滅する! 哺乳類はより "進化" して、(気温とは無関係に) オスメスが等分に誕生。 逆に線虫では、大部分が "雌" で、母体で "無性生殖" する。
興味深いことには、鳥類や両生類 (蛙など) では、ZとW 染色体をもち、ZZでオス、 ZWでメスとなり、哺乳類とは異なる (言わば、逆の) 性決定の仕組みをもつ。い よいよ、性決定の謎は深まる ばかり。。。
更に、魚類 (メダカやティラピア等) では、"アンドロゲン" 処理による XX 雄、"エス トロゲン"処理による XY 雌、さらに、 YY であるスーパー雄などを作出することが 可能!! 驚くなかれ、魚類の X 染色体と Y 染色体 とは、 殆んど"同サイズ"! つまり、進化途上で、X から Y が出現、あるいはその逆!?
「種の起源」出版以来160年振りに、「性の起源」を巡って、「ダーウイン2世」が やって来る!
詳しくは: "性の起源" ―遺伝子と共生ゲームの30億年 (1995) by リン=マーグリス etc (著).
ウイルスや細菌/かびには、「性別」がないが、多細胞生物 (植物や動物) には、 性別 (セックス) が存在 (かつ必須)! 一体何故?
実は、2006年に、東大の研究グループが「性の起源」(「男気」という "オス特異的" 遺伝子) を 初めて、「ボルボックス」という生物 (緑藻) 中に発見したそうである:
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2006/22.html
そのオス遺伝子は、 N 源「欠乏」状態になると、初めて発現する。 つまり、「種の 保存」に必須!

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