2023年4月23日日曜日

「蚕」 創薬: 抗生物質「 Lysocin E 」(カイコシン) から
5千年の「謎」解き: 好物「桑 」由来 ポリフェノール:
線虫 やショウジョウバエの寿命を 3割も延長!
桑による「養蚕」業から「養人」業への産業革命?

蚕の寿命は約2か月、線虫の寿命の4倍。 線虫に比べて、扱い易い点は、顕微鏡な しに、観察できること。そして、ショウジョウバエと違って、(家畜化され) 羽根 はあるが飛べない!
そこで、(桑の葉を餌に) 蚕を実験動物として飼育しながら、 (東洋的な) 創薬研究を始めたユニークな学者がいる。 我が輩の後輩で、東大薬 学部教授の関水くんである。
彼は、(その昔) 蚕に発癌遺伝子RAS を過剰発現すると、幼虫期に死ぬが、RAS や PAKの下流にある「RAF」(発癌キナーゼ) を阻害する薬剤を注射すると、幼虫が死亡しなくなるこ とを発見した! 従って、このGM 蚕によって、(例えば) 「PAK遮断剤」を(短期 間に) スクリーニングできる動物実験系を確立したわけだ!
実は、2015年頃、ドイツのマックスプランク研のグループが、(MEK阻害剤を用いて)ほぼ同様な結果をショウジョウバエで、観察している。従って、 この現象は、"多細胞動物" に共通なものと考えられる。
更に十年ほど前に、(関水研究室は)とうとう (12個のアミノ酸からなる) 環状ペプチドである抗生物質「 Lysocin E 」をLysobacteria から発見したそうだ! MRSA (薬剤耐性の黄色ブドウ球菌)などに効く抗菌剤である。 従って、我が輩のめざす「PAK遮断剤」として開発されたものではないが、我が輩の「山勘」に従えば、「PAK遮断剤」として(将来) 転用しうる可能性も「無きにしもあらず」。。。駆虫剤として開発された「イベルメクチン」が「PAK遮断剤」として、再登場した前例があるから。。「Lysocin E」は果して、 "RAS" 幼虫 (肥満体?) を救えるか?
その理由は少なくとも2つある。 その一つは、天然「PAK遮断剤」 である納豆由来のビタミンK2 (メナキノン) によって、その作用が増強されること。 もう一つは、その昔、抗癌剤として開発され、HDAC 阻害剤 (つまりPAK遮断剤 ) として市販された「FK228」(Istodax) と同様、環状のペプチドだからだ。 た だし、分子量が1700 前後なので、そのままでは、到底「BBB」 を通過しないから、 脳内疾患 (NF 腫瘍など) には無効である! できれば、開環して、(D-Trp を含む) 3個か4個のア ミノ酸からなる (分子量が 500 前後の) ペプチド (主に、右図の右半分) に変換したい!
特に、 L-Thr の水酸基を燐酸化して、いわゆるPro-Drug 化すると、水溶性が増し、 腸管吸収が良くなる! 前述したが、 天然PAK遮断剤「Triptolide」を燐酸化した「Minnelide」は3000倍、 水溶性 (Bio-availability) が飛躍した!

蚕の品種改良: 驚くなかれ、蚕を「桑」以外の食物、例えば「キャベツ」や (植物性) 人工餌料などでも飼育できる
"東京農工大" の研究者による発明/発見! 従って、人工餌料に検体を含ませて、「健康長寿」に役立つ (PAK/TOR遮断物質) を、蚕でスクリーニングすることが可能 (2-4 か月の辛抱) !
線虫の「CL-2070」株同様、GFP-HSP (SINE) 融合遺伝子を発現する 「GM 蚕」 を作製すれば 、 健康長寿を誘導する「HSP」(SINE) の発現を 「heat-shock」後に蛍光で追跡できるから、 "卵" の段階でも、PAK/TOR 遮断物質の検出が可能! 時は金なり!
For detail, see REF:
R H Kimura, P V Choudary, C W Schmid (1999).
Silk worm Bm1 SINE RNA increases following cellular insults. Nucleic Acids Res.; 27:3380-7.

"5千年に渡る"「謎」が遂に解けた! 実は「桑」(Mulberry) の葉っぱや果実由来のポリフェノールには、 線虫の寿命を少なくとも 3割も延長する作用がある (1)! 蚕が「桑の葉」を好物にする理由は自ずから明らか! その有効主成分は「ロットレリン」(Rottlerin) と呼ばれる「PAK」遮断剤らしい! 中国大陸の "Silk-Road" に沿って、 5千年前から桑の葉を餌にして蚕が「家畜化」されたが、 その成功の由来 (「分子」メカニズム) が遂に明らかにされた。

もし、蚕の家畜化に成功しなかったら、人類は「蜘蛛の糸」を利用して衣類を織っ たかもしれないが、蜘蛛は「肉食」なので、 "家畜化" が難しい!
1. Shanqing Zheng, Sentai Liao, Yuxiao Zou et al (2014).
Mulberry leaf polyphenols delay aging and regulate fat metabolism via the germline signaling pathway in Caenorhabditis elegans. Age (Dordr); 36: 9719.

更に、桑の葉には「美白作用」もあることが、つい最近明らかになった (2)。美白成分はRottlerin に似たフラボンである。メラニン合成にはPAK が必須であるから、 これらのポリフェノールがPAKを遮断していることは明らか! 蚕の肌が「真っ白」なのも、"桑" のせいかも? 最近、 健康食品として、「キャベジン」代わりに、桑の葉を含む「青汁」が通販されているようだ! PAK遮断物質には、「鎮静作用」及び "免疫増強作用" などもあるから、 それだけでも、 "健康長寿" に繋がる。。。
2. Anna Gryn-Rynko, Beata Sperkowska, Michał S Majewski (2022).
Screening and Structure-Activity Relationship for Selective and Potent Anti-Melanogenesis Agents Derived from Species of Mulberry (Genus Morus). Molecules.;27: 9011.

戦後、ナイロンなど人工線維の開発により、絹の需要がバッタリ減少し、養蚕業は 衰退したが、「蚕」の代わりに 「人類」を桑で飼い慣らすという、「養人」業 (企業変換)が 日本全国の野山に広がる時代が近い将来、やって来るかもしれない。。。

さて、「桑の青汁」と「カルピス」を半々に混ぜたら、一体どんな味になるか、想 像はつきかねるが、 両方とも「健康長寿をもたらす」ことは確か。そこで、(例え ばの話だが) 江沢 & 関水 (合弁) 会社を立ち上げて、この 新「ドリンク」("クワピス" or "Green Calpis") を開発す るというアイディアは如何だろう。。。 実は、百年以上昔、モンゴール高原から戻った来た「三島海雲」(元僧侶) が日本 初の酸乳飲料を「初恋の味」というキャッチフレーズで売り込み始めた折に、 「カルピス」と名付けたが、この「カル」は牛乳中のカルシウムに由来する。。。

0 件のコメント:

コメントを投稿