2023年4月14日金曜日

"PAK 阻害剤" を 定量的に "スクリーニング" 出来る
ATP/ADP-Agarose (ビーズ) 法 (試験管内反応)
大腸菌で 「GFP-PAK1」 融合蛋白を量産!

哺乳類のPAK遺伝子 (cDNA)にGFP遺伝子 (cDNA)を融合し、大腸菌 内でこの融合遺伝子を発現すると、 "蛍光を発するPAK" (C 端半分 = 「キナーゼ ドメイン」のみ) を大量生産できる。 さて、PAKはキナーゼなので、基質であるATPや分解産物であるADPに強い親和 性を持ち、 ATP/ADP を固定したアガロースビーズに強く結合する。 従って、 この ビーズ を使って、大腸菌で製造された "GFPーPAK融合蛋白" を容易に (ワン・ ステップで) 精製できる。
さて、イベルメクチンやCEPー1347など各種のPAK阻害剤は一般に、ATPの誘導体であり、PAK分子の「ATP」結合ポケッ トに結合する。 従って、このビーズに結合した蛍光PAKをPAK阻害剤で処理すると、その親和性の強さに比例して、蛍光PAKが溶出されてくるはずである 。

この方法を利用すれば、従来のごとく溶出してくる (非標識の) PAKを定量する ために ウエスタン・ブロットなどの (手間と時間のかかる) 方法を使わずに、蛍 光PAKを直接定量できるので、一連の阻害物質を敏速かつ安価にスクリーニングで きる。 その昔 (10年ほど前)、友人である英国オックスフォード大学のステファン・ クナップ教授に、 この蛍光ビーズを使って、PAK阻害剤のスクリーニングを勧 めたことがある。。。ごく最近、英国がとうとうEU から脱退したので、ステファ ンは故国ドイツのフランクフルト大学の薬学部に転勤したというメールを受け取っ た。。。

(念願の) 「GFP-PAK1 融合蛋白」 を 発現するGM 大腸菌を、自ら作成するた めに、その昔、GFP-HSP16 遺伝子を発現する線虫株 (CL2070) を作成した (コロラド大学、 Boulder) の Chris Links 教授の研究室か、あるいは、 GFP融合蛋白発現ベクターを開発した Bio-Tech 会社「Clon-Tech」(サンフランシスコ郊外) に、 今夏 (6月中旬-8月中旬) 滞在する計画を目下、 立てつつある。。

我が輩が学生の頃から、50歳でいわゆる「ベンチワーク」(実験机で働く) を辞め るまで30年間、ATPase や Kinase を定量するのに、放射性のATP (ガンマー燐酸 がアイソトープ) を基質に利用していた。 微量なアイソトープは、決して危険で はないし、 しかも安価だ! しかしながら、原爆、チェリノーブル事件、福島原 発の破壊 以来、民間に、「放射能恐怖症 」(アレルギー) が慢延し、実験室 でアイソトープを使用することさえ、殆んど禁止されるようになった! そして、 代わりに、「高価な抗体」を使用する定量法が市場を占拠した。 言わば「悪貨が 良貨を駆逐した」感あり! 我が輩 (80歳) が今後 "挑戦" する (ADP ビーズを利用する)「GFP-キナーゼ/ATPase 融合蛋白」定量法は、「悪貨を駆逐して、良貨を取り戻す」実験室でのささやかな「革命」である。

NOTE: GFP-PAK1 was made by inserting full-length wild-type human PAK1 (generous gift from Alan Howe, UVT) into EGFP-C1 vector (Clontech) cut with BglI+ EcoR1 (by Joan Taylor).

このささやかな「革命」の前哨戦として、数年前に、我々は沖縄の琉球大学で、ホタルの 蛍光 (ルシフェラーゼ) を利用した「キナーゼ」定量法 (愛称「マカロニ 蛍光法」 ) を開発した (1)。 この方法では、手間のかかる「Western-Blot」はもはや必要 なくなったが、 なお「キナーゼに対する抗体」が必要だった。。。 来たるべき「革命」は、 「抗体を駆逐する」発明である!

REF:
1. Nguyen BC, Be Tu PT, Tawata S, Maruta H. (2015). Combination of immunoprecipitation (IP)-ATP_Glo kinase assay and melanogenesis for the assessment of potent and safe PAK1-blockers in cell culture. Drug Discov Ther.; 9: 289-95.

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