Contact inhibition and malignancy by M. Abercrombie
Nature volume 281, pages 259–262 (1979):
癌生物学の先駆者、 英国ケンブリッジ大学教授 Michael Abercrombie (1912-1979) によれば:
E-Cadherin と共に、抗癌蛋白メルリンは、 "正常" 細胞の増殖や運動が (細胞同士の) 接触
によって "停止する" 現象に必須。 従って、メルリンが欠損しているNF2 患者の脳では、
発癌キナーゼである "PAK とTOR" が異常に活性化され、細胞同士が「接触阻害を失う」ために、 "腫瘍化"する。 言い換えれば、「PAK/TOR 」遮断/阻害剤は、「メルリンの代行」を果たしている!
我が輩が (渡米直前に) 東大薬学部で一年半ほど助手をしていた時分に、我が
研究室で、"卒業" 実習をやった学生の中に、江沢くんという学生がいた。彼が選んだテーマが、この「Contact Inhibition 」だった。 卒業後 (1973年) 直ぐ、彼は「カルピス」に入社した。 その後ずっと後になって、カルピスなどの酸乳製品に「PAK遮断作用」(つまり抗癌作用) があることが判明したので、 正に偶然であったかもしれないが、 彼の選択は「正解」 (Ende Gut, Alles Gut) だった!
当時、卒業生の大部分は、 大学院に進学するか、製薬会社に就職したので、 "食品会社" を選んだ彼の選択は、極めてユニークだった! もっとも、我が輩の如く、半世紀以上ずっと、"海外で研究生活"を続けるのも極めて稀な選択であるが。。。
"PAK" を (ラパマイシンによって) 人工的に活性化する「トリック」!
十年ほど昔、米国のノースカロナイナ大学の研究グループが、奇妙なトリッ
クを開発した。 あるキナーゼの 「ATP結合部位」近くに、ラパマイシン (TOR 阻
害剤) に結合する 「FKBP12」 ( Thr22 through Glu108) を挿入すると、そのキ
ナーゼが、この阻害剤によって、アロステリック的に「活性化」されるようにな
る! つい最近、そのトリックを使用して、(ラパマイシンによって) 「PAK 」も
活性化されるようになった!
さて、ラパマイシンには抗癌作用や寿命を延ばす(建設的な) 作用もあるが、
免疫機能を抑制する (副作用) もある。 何故、この副作用が発生するのか、そ
の謎を解く鍵 (可能性) が一つ見つかった 。。。 PAK には本来、免疫を抑制す
る機能がある。 従って、偶々、細胞内で、この「FKBP12」に機能的に類似した蛋
白がPAK に結合したために、ラパマイシンによって活性化され、免疫機能が抑制
される! Who knows...
REF:
Onur Dagliyan, Andrei V Karginov, Sho Yagishita et al (2017).
Engineering Pak1 Allosteric Switches. ACS Synth Biol.; 6: 1257-1262.
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