2022年12月21日水曜日

意外! 線虫には「目やオプシン(光受容体)」がないが、
色 (少なくとも、ブルー) を (白色光下で) 識別出来る!

ごく最近発表された米国の MIT (2002年にノーベル受賞の Bob Horvitz の研究室 ) とエール大学の共同研究結果によれば、(目やオプシンがないので) 「盲目」か と思われていた線虫が、青い色を識別して、遠ざかる習性があることが判明した (1)。正に「目に鱗」である!
この現象は、毒性をもった (ブルーの) 青かびや緑膿菌を、避ける (食べぬ) ための、防御手段の一つらしい。 この逃避現象は「白昼」では起こるが、「暗黒」では起こらない! つまり、何らかの手段で、色を識別している。 色々な変異体の逃避現象を調べてみる内に、大事な遺伝子が (少なくとも) 2つ だけ見つかった! その一つは線虫の遺伝子 Lite-1, もう一つは緑膿菌の遺伝子 PA14 (Pyocyanin と言う「青色の毒素」を生産する!) であることが判明した。
"Lite-1" はごく最近 (2016年) 線虫に初めて発見された (新しい) 「味覚/光受容体」 を生産する遺伝子。 紫外線 (あるいは青色) に極めて感受性が強い。 人類に例え れば、「青酸カリ」をいち早く察知しうる味覚受容体! 人類にはこれがないか ら、(無味無臭の) 青酸カリによる殺人事件が (戦後) 頻発した!
これが「PAK1」 と何らかの形でリンクしているかどうか、調べてみるのは、興味深い。実は、この「ブルー逃避反応」には、線虫のキナーゼ (哺乳類のキナーゼ「JNK」を活性化するキナーゼの仲間) も必須らしい。 哺乳類では、PAK1 はその上流にある! もし、このキナーゼが「PAK1」にリンクしていれば、PAK1 欠損株は、緑膿菌を食べて敢え無く死んでしまうはずだ。。。願わくば、そうでないことを望む。。。
実験室では、毒性のない (無色の) 大腸菌を通常、「線虫の餌」として利用するが、自然界では、様々な毒性の菌も繁殖しているので、それを自分で選別して、生き抜く「知恵」が必要!
参考文献:
1. Dipon Ghosh , Dongyeop Lee, Xin Jin , Robert Horvitz , Michael Nitabach (2021).
C. elegans discriminates colors to guide foraging. Science.;371 (6533):1059-1063.

0 件のコメント:

コメントを投稿