2022年12月23日金曜日

船酔い止めの薬「Scopolamine」(商標ブスコパン) :
大量に経口すると、認知症に似た「記憶喪失」に!
その解毒剤は、アピゲニン等の「PAK遮断剤」

最近、豪州一帯で、「ベイビーほうれんそう」による中毒が発覚した。その原因は、それに混入していた雑草 (Thorn Apple=朝鮮朝顔) 中のアルカロイド 「Scopolamine」などであることが判明した。 このアルカロイドは、実は覚醒剤「コカイン」に良く似た化学構造をしており、どうやら共通の標的分子に結合するらしい。。。豪州では、ベービーほうれんそうを収穫する際、雑にトラクターやブルトーザーを使用するので、(畑の除草が雑だと) 雑草 (毒草) が混在してしまう!
興味深いのは、このアルカロイドの薬理作用である。1977年に、米国の有名な病院 "Mayo Clinic" の医者、ドナルド=ピーターセンが、マウスにこのアルカロイドを比較的大量に注射すると、「認知症」に類似した症状 (特に最近憶えたことを忘れ易くなる) 、つまり、迫る大学受験に備えて、猛勉強 する受験生には、「最悪」のコンディションを もたらす、ことを発見した!
さて、それでは、この薬剤の主な標的は一体何だろうか? 最近の研究報告によれば、少なくとも、2種類のキナーゼ (PKA とTOR) の活性化が関与しているようである。更に、面白いのは、この薬剤によって「認知症化」したマウスに、天然PAK遮断剤である「アピゲニン」(プロポリスやカモミール茶の主成分の一種) を投与すると、学習能力や記憶が蘇る、という研究結果が、韓国のプサン大学のチームによって、ごく最近報告された (1)! 従って、「Scopolamine」の標的キナーゼの一つは「PAK 」である可能性が出てきた。。。
参考文献:
1. Yeojin Kim, Jihyun Kim , Meitong He , et al (2021)。
Apigenin Ameliorates Scopolamine-Induced Cognitive Dysfunction and Neuronal Damage in Mice. Molecules. 26(17): 5192.

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