2022年12月13日火曜日

PAK 遮断剤の「美白作用」の発見は、
大晦日の「勘違い」(早合点) が発端!
「PD-L1 遺伝子」発現の PAK依存性も
「大晦日」の "御喋り" (文通) から誕生!

自然科学者と芸術家 (特に画家) との共通点は、先ず「観察」から始まる。従って、 自分の目で、世の中 (周囲の自然) をじっくり観察できない者は、科学者にも画家にもな れない。天動説と地動説との違いは、 結局「観察の深さ」の違いから生じた!
古代ギ リシャ時代には、日常の「単純な」肉眼観察から、「太陽も月も地球の周囲を回 る」という (天動説) が流行した。 ところが、16世紀後半になって、コペルニクスやガリレオ=ガ リレイ等の (極く少数の) 天文学者が、望遠鏡による観察から、「地球は自転しながら、太陽の周囲を回り、月は地球の周囲を回る」という、よ り複雑な「地動説」を唱え始めた。 不幸にして、在らぬ「神」を信じ「科学を無視」する時の「カトリック教会」 (当事の権力者たち) は、ガリレオを「異端者」として、とうとう幽閉してしまった! 幸い、今日では、(小学生を含めて) 大部分の人々が「地動説」を受け 入れている。
さて、 PAK遮断剤の「美白」 (メラニン色素の合成を抑える) 作用の発見への発 端は、2014年前後に遡ることができる。 実は、この年に我が輩の母親が、 "97歳間近" で他界 (大往生) した。 そして、東京の実家に住み (母の老後の面倒をみてくれ た) 我が妹が、残された幾許かの遺産を全部相続 (管理) してくれた。 そして、 その "一部" を有り難くも、沖縄の琉球大学構内に我々が設立しつつあった「PAK研究センター」 (PRC) 支部の運営/維持費として、寄付してくれた。
いわゆる「沖縄」プロジェクトの発端は、 2013年2月に、琉球大学農学部の多和田教授らが、線虫を実験材料にして、沖縄特産のゲットウ (月桃) とい う植物の葉っぱのエキスに、寿命を延ばす作用があることを突き止めたことにある。偶然にも、 丁度同じ時期に、我々は、PAK遺伝子が欠損する変異株 (RB689) が、野生株より、 6割も長生きすることを突き止めた。 そこで、ゲットウやその他、沖縄特産の植 物、のエキスの「PAK遮断作用」を、共同で研究しよう、というアイディアが誕生したわけである。沖縄が、少なくとも戦前、「最も健康長寿な県」として、知られていたからである。。。 先ず、手初めに、九州や関西から数名の講師を招き、琉球大学構内で、「創薬シンポジウム」を開催した。
さて、我が「PRC」沖縄支部が、実際に発足したのは、2015年の春だったが、その数カ 月前 (2014年の歳末) に、「天安門事件」(1989年) の直後に (北京から) メルボルンに亡命し、博士号を取得後、10年近く (癌研究所 内の) 我が研究室で、PAK研究の"大黒柱"として、活躍していた (北京大学医学部出身 ) の賀 紅 (Hong He) という女性研究者 (夫は大学の同級生で、独り息子と暮らす一家) の新築の家で、 「年越しそば」 代わりに、"中国風"のダンプリング (水餃子) 等を食べながら、新年を迎えつ つあった時に、偶々話題になったのが、"PAK遺伝子欠損" マウスのフェノタイプ (形 質) だった。Hong 曰く 「PAK が欠損すると、黒い毛のマウスが白ねずみになる ようだ」 (つまり、メラニン色素合成には、PAKが必須!) 。 日本で「紅白歌合戦」を観賞している時刻に、我々はメルボルンで、「科学」を真 剣に論じていた。。。
さて、 Hong の研究室 (メルボルン大学病院) に入手した白ねずみ (PAK遺伝子欠損株) は、実は、米国のある癌研 (FCCC) のPAK研究チームが開発した代物らしい。そこ で、その所長であるロシア系研究者、ジョン=チェルノフに、その話をメールで照会し たところ、「意外な」返事が戻ってきた。 その白ねずみには、実は、PAK遺伝子 以外に、メラニン色素合成に必須なチロシナーゼ遺伝子も欠損している、という のだ! 実は、哺乳類では、PAK遺伝子とチロシナーゼ遺伝子は、同じ染色体上に あり、しかも隣接しているそうだ。 従って、PAK遺伝子を欠損させる操作過程で、チロシナー ゼ遺伝子も同時に欠損する可能性が高い! 言い換えると、メラニン色素合成と PAKとの関係は、未だ「不明」(=謎) のままだった!
そこで、"PRC" 沖縄支部長 (多和田教授) の指導下にあるベトナム出身の博士課程の 院生 ( Be Tu さんという女性) に、マウスのメラノーマ細胞のPAK遺伝子の発現 を「SiRNA」で選択的に抑制した場合に、メラニン色素合成が一体どうなるか、を博士 論文研究の一環として、挑戦してみるように指示した。 その結果、PAK遺伝子の 発現が抑制されると、(その下流にある) チロシナーゼ遺伝子の発現も抑制され、メラニン色素合成 が見事に抑制された! つまり、メラニン色素合成は、発癌同様、「PAK依存性」で あることが、初めてはっきりと (遺伝学的に) 証明された訳である。 勿論、その「歴史的」研究論文で、その院生は「博士 号」をめでたく獲得した! 言い換えれば、美白 (メラニン色素の合成阻害) 作用 を指標にして、「PAK遮断剤」のスクリーニングが敏速にできる、という訳である。。。 勿論、ゲットウや沖縄産「プロポリス」等由来のエキスが美白作用を示すこと も (間もなく) 判明した。
その後間もなく、「ケトロラック」と呼ばれる鎮痛剤 (市販のPAK遮断剤) のカル ボン酸を、CC (Click Chemistry) で、エステル化することによって、その "細胞透 過性" を飛躍的 (500倍以上!) に増幅することに成功し、2017年に我々は、 (短期ながら) 実り多き「沖縄プ ロジェクト」に幕を閉じた。 その後は、メルボルンの自宅に、「PAK研究財団」なる事務所を設け、パソコンを専 ら通じて、海外の「若いPAK研究チーム」の育成/援助を、細々ながら続けている。。。2019年秋には、"財団主催"で、初の「国際PAK研究シンポジウム」をニューヨークで開催した。
更に、2019年の「大晦日」 (コロナウイルス発生直前!) には、Hong への "メール" 交信 (実は、我が輩の自宅には、騒々しい "電話" を設置していない!) で、京大医学部の本庶さん (2018年にノーベル医学賞) の発見した 、 いわ ゆる免疫「チェックポイント」( PD-1 や PD-L1) が、我々の話題になり、結局、 これらの遺伝子の発現は、九分九厘、「PAK依存性」である、という結論に達し、我 が輩は、その「仮説」を即、 論文に発表すると共に、彼女は 「PAK欠損」 マウスでは、これらの遺伝子が発現しないことを (間もなく) 実証するのに成功した!
なお、「現役」の研究者としては、彼女 (Dr. Hong He, 59歳) が目下、 少なくとも豪州 (否、南半球全体) で、「PAK」研究の第一人者である!

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